輸入・廃番文房具の発掘メモ

古い文房具を集めています。見つけた文房具や資料を紹介しています。

Eagle Pencil の繰り出し式シャープペンシル「Fishbone」12本セット

あああ、ブログの更新遅いなー

と更新するたびに思うのだが、とにかく続いてはいるので、気長にやっていこう。

 

今日はイーグルペンシルの100年前の繰り出し式シャープペンシルの紹介。

何気にイーグルペンシル率多いな、私。

イーグルペンシル、かなり好きなのだ。

理由としては、文房具を集めだして割と初期に手に入ったイーグルペンシルのカタログがとても好きだったり、

実はイーグルペンシル、パテントたくさん登録しているなど、面白い商品が多い。

 

そして、意外と手に入りやすい。

手に入りやすい理由としては、多分ヒット商品が多いんだろうなと。

だから今でもオークションに出てくる。

そんなことも全部ひっくるめてご縁かなと。

 

前置きが長くなったが、今日紹介するのはこれ。

 

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「No.532 Eagle Fishbone Propeller Pencils」12本セット。

 

どうやら未使用の12本フルセット、芯もそろっていて、箱の状態もいいとか

なんなんだこれ。

先日の鉛筆削りのディスプレイに続いてびっくりだ。

 

いつ頃のものかというと、オークションでは1930年頃とあったが、

うーんもう少し古いかなと思って調べたら、

1917年頃にはこの商品はあったらしい。

ただAmerican Stationerでは1920年代前半に少し名前が出てくるだけで

イラスト入りの広告もないし、

その後の情報も見つからなかったのでかなり短命だったのではないだろうか

 

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箱をよく見ると、1908年9月22日のパテント情報が。

調べたら見つかったのがこれ。

 

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え、これだけ???と思ったのだが、説明を読むと胴にくびれのない太めのデザインがポイントらしい。

ちなみにこのパテントがそのまま今回紹介しているFishboneを指しているのではなく、

このパテントの内容をFishboneで採用しているということかと。

そして、もしかして、このパテントの前は、今では割と当たり前になっている胴がくびれていないタイプのシャープペンシルってなかったのかな。

・・・詳しくないのと、意識してみてなかったのでよくわからない。。。。

これからちょっと気にしてみてみよう。

 

 

さて、Fishboneの話に戻ろう。

Fishboneの名前の由来はこの模様であろう。

 

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この模様は何かというと、塗装にこの模様を入れることで

滑り止めの役割を果たしているかと。

 

イーグルペンシルは鉛筆の軸にギザギザの滑り止め加工(ローレット加工)を施したり、いろいろ考えるメーカーなのだ。

なのでシャープペンシルにも同じように滑り止めを施したのだろう。

(イーグルのローレット加工の鉛筆→ https://tai-michi.hatenablog.com/entry/18684941

 

ちなみに、このシャープペンシル、金属製だ。

中の1本が塗装が剥げており、地がむき出しになっている。

 

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塗装に凹凸を持たせているせいだろうか。

これは握るとぽろぽろと塗装がはがれてくる。

他のものはそんなことないのだが、おそらく少しでもはがれてくると連鎖してしまうのだろう。

カランダッシュの筆記具(高級ラインでないほう)がちょうどこんな感じになってしまうことがある。

 

芯の交換は限界まで芯を出すと、芯を支えている金具が出てくるので、

そこに差し込むようだ。

 

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芯は普通の黒芯。

セットの入っているケースには5本づつ入っている。

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この形やデザインを見ると、今でもあまり違和感がないが、

その分当時としてはかなり先進的なものだったのではないだろうか。

 

何はともあれ、我が家にようこそ。

同じマークのお友達がたくさんいるので

ゆっくりして行ってね。

 

 

消しゴムいろいろ 

先日、タモリ倶楽部で5年前出演時の映像を総集編で流していただけたのだが、

そのタイトルと説明がすごかったので、記念に残しておきたくなり、とりあえずブログに書いておくことにした。

 

「振り返れば誰もいない!ぶっちぎり!孤高のマニア列伝」 

当番組に時折訪れるマニアの方々。その中には、世の中の大多数の人が目を向けない超ニッチなジャンルに一人でのめり込み強烈なインパクトを残した方も。今回はそんな超絶マニアたちのオンパレードです。(2020/6/19 テレビ朝日放映)

 

私含め5名の紹介があったのだが、他の方が架空の地図を描き続ける方や辞書をひたすら集める方など本当にぶっちぎっていて面白かった。

そんな中に入れていただいて、僭越と光栄両方の気持ちを持って見たが、

意外と消しゴムの尺が長かった。

 そういえば、最近ブログで消しゴムの紹介していないなぁ、、、ということで、

割と最近入手した消しゴムたちを紹介することにした。

 

まずはA.W.FABERの消しゴムセット。

 

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写真だとサイズ感がわからないのだけれど、A4くらいのサイズなので、消しゴムはかなり小さい。

ボール紙で上につるせるように穴が開いている店頭ディスプレイだ。

2段目にペリカンの消しゴムがあるのはご愛敬。一緒に売っていたのだろう。

 

 この消しゴム、ちょっとした残念な思い出がある。

オークションで見つけてしばらく眺めて、買おうかどうか迷っていたら、割引オファーがきたので、「よし!」と思って買ったものの、送り先を間違えてアメリカの転送サービスの住所にしてしまったのだ。

(海外オークションで、日本に送ってもらえない商品を購入する際に、一旦アメリカやドイツで受け取って日本に転送してくれるサービス)

 

 なかなか届かないなぁと思っていたら、転送サービスから転送依頼のない商品が入荷しているが、これどーするの?とメールが来て初めて間違いに気づいた次第だ。

 仕方ないのでアメリカらから日本に送ってもらい、その分余計な送料と手数料がかかってしまった。ああああ、もったいない。

 

 とはいえ、この消しゴムは全体的に小さくてかわいらしいのと、

マーブル模様の消しゴムが好きなので、いいものを手に入れられたし、まぁいいかと思っている。

 

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天然ゴムの消しゴムの渋い色合いで出来ているマーブル模様や線になぜか見とれてしまうのだ。

 

 いつ頃のものかというと、おそらく1930年前後ではないかと思われる。

1932年のカタログに品番や見た目が似た感じのものが掲載されていた。

 

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入手したのが7042番で、カタログが7163番なので、入手したほうが少し古いかなと思っている。

 

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※1932年のA.W.FABERのカタログ。

 

 

 続いて、エバーハード・ファーバーのピンクパールを紹介しよう。

これは1950年くらい以降のアメリカのカタログによく掲載されており、アメリカではかなりポピュラーな、日本でいうRader、MONOに当たるような消しゴムだと思う。

 

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 日本でもよく似た名前の消しゴムが作られていたり、海外オークションでもよく見かけるので、手に入れておこうと思っていたが、いつでも手に入りそうなものは却って後回しになってしまうものだ。

 それで長年持っていなかったが、日本の骨董市で良い状態のものを手に入れることができた。

 

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 欧米の消しゴムは、箱の一部を折り曲げてそのままディスプレイにできるタイプが多い。これもそのタイプだ。

 肝心の消しゴムは劣化も少なく、きれいな状態で一段残っていた。

 

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 昔の欧米の天然ゴムの消しゴムは、質感的にまったりしていて、ゴムの色合いが優しい。今も欧米の天然ゴムの消しゴムはあるのだが、妙にてらてらしていて、あまり好きになれない。

ちなみにPink Pearlは現在も販売されている消しゴムだ。

 

 質感がまったりしていて、色が優しいから好き、とか言っておいて、それをひっくり返すような消しゴムを紹介しよう。

 

SEEDのアニマル消しゴムだ。

 

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まずこの箱がグッとくる。誰が書いたんだ、これ。

この動物なのにかわいさがなく、全く購入者への媚がないイラストが大好きだ。

 

中の消しゴムもなかなかシュールだ。

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動物の形の消しゴムをショッキングカラーの消しゴムで囲っている。

 

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色の組み合わせも「トラは黄色」とかそんな一般的な概念を無視しているところが斬新でいい。

 

ひび割れているものがあったので、中の動物を取り出してみた。

 

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見たままだった。

 

ちなみに昭和40年頃にSEEDがアメリカに輸出していた消しゴムがあるのだが、

動物の形がそれとよく似ている。

 

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下がアメリカに輸出されていた消しゴムだ。

 

ただ、輸出されていたものは素材がプラスチックではなく天然ゴムのようだ。

あと厚みも輸出されていた方が薄い。

ということはおそらく、アニマル消しゴムは輸出していたアニマル消しゴムの輪郭だけ参考にして

後に作られたものではないかと思う。

 

最初に紹介したFABERの消しゴムと比べると随分カラーが違うが、

私にとってはどちらも手元にあると元気が出る消しゴムだ。

最近新しい消しゴムを入手する機会が減ってしまったが、

まだまだ見つけて紹介していこうと、気持ちを新たにしたのであった。

 

 

★文具のとびらの連載「文房具百年」、今月の原稿UPされた。

1920年からのダイレクトメール~針なしホッチキスについて」

https://www.buntobi.com/articles/entry/series/taimichi/011836/

 

こちらもよろしく。

 

 

 

 






 

 

 

10年目のプレゼント? Eagle Pencil 鉛筆削りディスプレイ

6月6日は自分の誕生日と同じくらい忘れられない日だ。

10年前、2010年6月6日に荻窪の六次元で開催されていた文房具のイベント「中村文具展」に行っていなかったら、古文房具のコレクションをすることはなかった。

 中村文具展 → 武蔵小金井の中村文具 https://nakamura-bungu.com/の展示やフリマなど。

 

その時のことは改めて語らないが、

あれからもう10年たったのかと思うと感慨深い。

思えば、あれからたくさんの古文房具を集めたものだ。

 

そして昨日、すごいものが手に入った。

スゴイは私基準なので、多くの人は「ふーん」かもしれないが

自分的には目を疑うようなものなのだ。

 

まずこちらから。

 

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イーグルペンシルの1913年のカタログだ。

今回手に入ったのではなく、これはずいぶん前から所有している。

 

その中の1ページがこれ。

 

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ペン軸と小型鉛筆削りの店頭ディスプレイの画像だ。

「あーあ、何かの間違いでこれ出てこないかなぁ。100年前だし無理だよなぁ」

これを見ながら何度かため息をついたものだ。

 

それがだ。

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現物来たー!!!!

 

まさかの、カタログと全く同じものが手に入ったのだ。

 

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ほらほらほらほら。

それも何と日本国内のオークションだ。

最初、見つけたときは目を疑った。

現物ではなく、広告のポスターではないかと

思わずスマホを斜めにして見てしまった。(3Dじゃないからw)

 

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写真ではなく、ちゃんと現物だ。それも一つもかけていない完品だ。

こんなことがあるなんて。

 

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イーグルペンシルのマークもちゃんと入っている。

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素晴らしい。よく残っていた。よくあった。。それも日本に。

保管していた方にとにかく感謝である。

 

古文房具を集め始めてぴったり10年目のタイミングで我が家にやってきたこの鉛筆削りのディスプレイは、

贈り物のように感じられた。

 

ずーっと探していて、出会えていないものは山ほどあるけれど

あきらめずに探していると、いつか出会えるのではないかという

希望につながる出会いだ。

 

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ボードの裏面。この部分を持って鉛筆削りに鉛筆を指して鉛筆を回す。

この裏面のパーツが飛び出して並んでいるさまですら愛おしい。

 

 

あと10年たった時、まだ古文房具を集めているかは

わからない。

でも、現物を見たいものや手にしたいものが

まだまだたくさんあることを改めて認識した10年目だ。

あきらめないぞ、これからも素敵な古文房具を探そうと

気持ちを新たにした。

 

 

 

 

 

明治時代のインク瓶

4月の上旬からほぼテレワークになり、

休日も食料品の買い出しで近所に行く以外は、建物の外に出ることはない生活が続いている。

 

出かけないことにそんなにストレスは感じないのだが、

「家にいるので溜まりに溜まっている片付けものができるはず」と思ってはいるものの

それがあまり進まないことがストレスというか、

「自分、しっかりしろ!」という感じになっている。

 

こういう時は、きれいなものを眺めて

ちょっとした現実逃避をしておくのがよい。(ほんとか?!)

 

今日紹介するのは明治時代のインク瓶。

古いインク瓶は比較的手に入りやすいが、大正・明治となると

そうはいかない。

特に明治時代のインク瓶で時代が特定できる形、ラベルなどが残っていてカタログなどメーカーの資料と突合せができる形で残っているものはなかなかお目にかかれない。

 

まずこちら。ライオン事務器(当時福井商店)のインク瓶だ。

 

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この「エスエフ商会」は当時の社長、福井庄次郎のイニシャルから来たものだ。

ラベルのデザインが格好いい。

真ん中に四角の立方体のようなマークがあるのは、

当時の福井商店の商標の「三菱」マークだ。

(ひし形3つの組み合わせ。三菱鉛筆とは無関係)

 

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ふたの素材が不思議で、古いインク瓶のふたはたいてい木にコルクをくっつけてあるのだが、

これは白っぽくてとても固い角か牙系の素材のようなものにコルクがつけられている。

 

明治34年のカタログに掲載されているインクと同じものであろう。

 

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この絵を見ると、左端2つのふたも白っぽく平らなものなので、

当時からこういうふたもあったようだ。

当時、すでに模倣品が売られていたようで、カタログにその注意が記されている。

 

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このインク瓶と一緒に入手したインク瓶がある。

 

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これも明治らしいいいデザインだ。

ラベルを見ると「MARUSHIRO」とあるので日本製だと思われるが、

どこのものかがわからない。

だが、よく見るとボトルにはフランスのインクのエンボスが入っている。

 

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この「NANTOINE PARIS」というのはメーカーの名前だろうか、とふと見たらライオン事務機のカタログにこのインクも載っていた。

 

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瓶のエンボスは「NANTOINE」で、最初のNがどこかに行ってしまったようだが、

このインクのことで間違いないであろう。

おそらくフランスから輸入したものを、ラベルを貼り替えて販売していたのであろう。

 

そしてペリカンのインクだ。

「ドラゴンのラベルのペリカンのインクを探している」と言っていたら、

いつもお世話になっている骨董屋さんの金田屋リヒトミューレさんが譲ってくれた。

ありがたい話である。

 

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ラベルの左右に感じのような文字が書かれているが、ちょっと違うようなので

中国に簡体文字だろうか。

このラベルのデザインは1904年のカタログには載っているが、簡体文字だとすると、

その後のカタログでも見ることができるので、時代はもう少し後かもしれない。

中身は製図用のインクで、墨に近いものだ。

 

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[1904年ペリカンのカタログと比較]

 

 

ちなみにこのインク瓶、とてもガラスが透明度が高いというかクリアである。

 

この3つのインク瓶がとても好きで、

ぼーっと見つめてしまう。

 

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おまけでもう一つ紹介しておこう。

明治の終わりか大正頃のインク瓶だ。

 

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「東洋ブラック」というこのインクは、おそらく当時大手だった篠崎インキが作った「日本ブラック」というインクをお手本にしたものだろう。

 

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これもやはり明治34年ライオン事務器のカタログに掲載されていた。

もしかしたら、東洋ブラックのほうが先かもしれないが、今となっては分からない。

 

以上が今日の私の古文房具によるプチ現実逃避だ。

 

 ああだけど、ライオン事務器のインク瓶がオークションで、文具でないガラス瓶多数とまとめて出品されていたため競ってしまい、高額落札になってしまったのを思い出してしまった。

 そして文具と関係のないガラス瓶は、オークションに出してしまおう、余裕ができたら、、、と思っていたが、それがまだできていないことも思い出した。

 

在宅時間が長いうちにやらなければ。

 

 

 

★おまけ★

Webマガジン 文具のとびらの連載「文房具百年」

4月は100年前の鉛筆削りを動画で紹介している。

「手洗い動画と100年前の鉛筆削り器」https://www.buntobi.com/articles/entry/series/taimichi/011478/

 

見てね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

名刺入れ付きねずみ年の年賀状

素敵な年賀状を見つけた。

え?年賀状??今!?というタイミングだが、見つけたのが最近なので仕方ない。

ちょうど今年はねずみ年だし、12年後までネタとしてキープするには

ちょっと長すぎるので、今出してしまうことにした。

 

それがこれだ。

 

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ネズミのカップルがダンスをしている絵柄で、

エンボス加工(立体的に浮き上がらせて)されている。

 

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よく見ると、毛並みまでつけられているし、手足も優しい丸みを帯びている。

更に下についている小さな封筒には、、、

 

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何やら入っている。

この時点でこの芸の細かさにワクワクするのだ。

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中に入っているのは、説明書きと名刺とする小さい紙、飛行船の封緘紙(裏に水糊がついている)だ。

 

説明書きを読むと「欧米では年賀状に名前を書いた名刺を同封している。日本でもそれをやると名前をよく知ってもらえるのでいいよ」といった内容だ。

この説明書きからすると、このカードは年賀状ということだ。

そして時代は「一種郵便」が三銭の時代なので、昭和6年から昭和12年まで。

その中で子年は昭和11年(1936年)なのでその前の年、昭和10年のものであろう。

飛行船の封緘紙は、かの有名なツェッペリン号が日本に飛来した後のものとすると

昭和6年(1929年)以降となるので、大体時代もあう。

名刺としての紙ではなく、封緘紙に名前を書いたのは、四角い紙はつまらないと思ったのだろうか。

この封緘紙はサイズがぴったりだが、この年賀状のセットとは別のものだろう。

よくぴったりのサイズのものがあったものだ。

 

余談だが、封緘紙に書かれた名前「横堀洋一」さんを調べると

ゲバラ 青春と革命」の著者であり、共同通信社で世界を舞台に活躍された方が同じ名前だ。

だが横堀氏は1933年生まれなので、時代が少し違うようだ。

そのためおそらく同姓同名の別人だと思われるが、

名前を残したのが飛行船のラベルであるというところが、なんだかご本人であってもおかしくないような感じを受ける。

 

ちなみにこのはがきは、裏面も美しい。

エンボスの後は影のようだし、切手の部分の丁寧なデザインが、上品で洒落ている。

 

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この年賀状は、他のバリエーションや他の干支でも作られたのだろうか。

あるのであれば、見てみたい。

 

いとう呉服店のものかもしれない組み合わせ文具

コロナウィルスの影響が日々ひどくなって不安な状況になってるが、

自分でできることはちゃんとやって、あとは日々冷静に過ごしたいと思う。

 

入学シーズンだが、学校や幼稚園がしばらく始まらないところも多いようだ。

今日も前回に引き続き入学シーズンやクリスマスにプレゼントとして贈られた「組み合わせ文具」の紹介だ。

前回は松坂屋もどきの組み合わせ文具だったが、今回はもどきではなく松坂屋の前身の「いとう呉服店」のものかもしれない組み合わせ文具の紹介だ。

いとう呉服店のものだとすると、大正14年松坂屋に社名変更しているでの、時代としては大正時代であろう。

 

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箱はこんな感じ。これを見て「おおー!」となったのだが、

実は同じ箱を箱だけの状態で以前購入した。

その時買った箱は2つで、もう一つはクリスマス風の絵柄だった。

 

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なぞの箱だったが、いとう呉服店のものかもしれないと思うと、ちょっとうれしい。

 

そして中身だ。

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完品ではなくいくつか欠けているものがあるようだ。

それに別で買ったものも入っているようだが、

鉛筆、ノート、楕円形の消しゴム、ペンケースあたりは雰囲気的にもともと入っていたものだろう。

 

個人的には消しゴムがうれしい。

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「ITOGOFUKUTEN」と印字されているので間違いなく大正時代のものだろう。

この消しゴムをみてこのセットを「いとう呉服店」のものではないかと思ったのだが、正直なところ断言できない。

 一緒にあった細長い消しゴム、これも細い縞状の2色になっていてかなり古いものだが、もともと入っていたのはこちらかもしれない。

 

 

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鉛筆は5本のうち3本がEBERHARD FABERで、残りはメーカー不明の無地の鉛筆という少し不思議な組み合わせ。

海外の鉛筆が入っているあたりは百貨店的である。

 

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ノートはシンプルな雑記帳。中は無地のざらざらした紙だ。

小ぶりのピンクのノートの表紙のデザインがおしゃれである。

 

このノートとは別で手帳のようなものが入っていた。

これがまたちょっと不思議な代物だ。

 

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金色の小口にマーブルの表紙?はとてもしゃれているのだが、、、

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表紙?のマーブル模様の厚紙が中途半端なところで切れているのだ。

それにこれが表紙だとすると、「MEMO」とも「NOTE」とも書かれておらず、

なんというか、どうしたらいいのか当惑してしまう形をしている。

おそらくだが、手帳カバーのようなものがあって、それにこの中途半端な部分を差し込んで使うようになっていたのではないだろうか。

 だがセットの中にそれらしきものはなかった。

 

なお、この手帳の紙は透かしが入っており、

その模様も何を表しているのかよくわからない。

 

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海から日が昇っているような絵に見えるが。。。わからない。

 

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クレヨンとペンケース。

クレヨンの中身はほぼなくなっており、1本だけ残っているのは別のメーカーのクレヨンだった。

 

それと、かわいいがこれもちょっと謎なものが入っていた。

 

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透明のセロファンに模様がついているものだ。

とてもかわいらしいのだが、松坂屋の値段シールが貼られているところを見ると

最初から入っていたものではない。

おそらくこれは持ち主の女の子が後日買ったものを一緒に入れていたのだろう。

 

このかわいいセロファンは「手工用 手芸用」とあるが

どういうものを作って遊んだのだろう。

当時ほかにもいろいろな柄があったのだろうか。

見てみたいものだ。

 

以上のようにもろもろ中途半端だったりなぞだったりの組み合わせ文具だ。

この組み合わせ文具が「いとう呉服店」のものか、

「いとう呉服店」「松坂屋」で良く買い物をするご家庭の子が持っていた

「いとう呉服店」とは関係ない組み合わせ文具か、

謎だ。

いつか答えがわかればいいな。

とりあえず、今の時点では、大正時代らしい組み合わせ文具のかけらが手に入ったというだけでも

私としては楽しいのだ。

 

おまけの画像。

昭和10年前後くらいの松坂屋の組み合わせ文具。

鮮やかな色の文房具が詰め込まれたこのセットは

組み合わせ文具の中でもかなりお気に入り。

 

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そういえば最近、目の覚めるような組み合わせ文具と出会えていない。

何か出てこないかな。

 

それと今年新入学のお子さんたちが、

新しい文房具を持って安全に学校で勉強できる日が

早く来ますように。

怪しい組み合わせ文具

組み合わせ文具を見るとつい手が出てしまう。

先日も一つ入手した。

 

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松坂屋の組み合わせ文具かな?

そういえば高島屋の組み合わせ文具でも、派手な色を組み合わせたデザインの箱があったな。

 

でも松坂屋にしてはちょっと雑な感じが・・・

 

開けてみる。

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完品ではなく、いくつかなくなっている模様。

おそらくノートや消しゴム、メモ帳、鉛筆削りとかが入っていたと思われる。

 

この「ワンパス」というクレヨン。

やぁ、ワンパス君!君のことは知ってる気がするよ。

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君がお手本にしてるのはクレパスだね。

 

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ちなみにワンパスの仲間というか、クレパスをお手本とした怪しいクレヨンは多数ある。

 

昭和初期頃の文房具は、クレヨンに限らずこういったものが山盛りあるので、

百貨店の組み合わせ文具だからと言って、こういうのが入っていないとは

限らない。

 

でも、怪しいにおいがしたので、マークをよく見てみた。

 

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形は松坂屋っぽいけど、あれ、木へん?あったかな。違和感が、、、

 

間違いなく松坂屋の組み合わせ文具の箱を引っ張り出し、マークを見ると。。

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ほら、やっぱり違う。

 

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松坂屋はもともと伊藤呉服店だったので、

マークは井桁の中に「藤」が書かれている。

よく見ると箱の紙の貼り方や「組合文房具」のラベルも雑で安っぽい。

ということで、この組み合わせ文具は百貨店のものではなく

「おたく、どちら様でしょうか???」ということだ。

 

 

ちなみに一緒に入っていた鉛筆は、特に有名メーカーをお手本にしたというのではない「カーボーイ鉛筆」だ。

 

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ラベルを拡大するとなかなか愛嬌のある顔である。

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鉛筆にもちゃんとカーボーイの顔が入っている。

 

今だったら、こういうのがあるとネットでたたかれるのだろうな。

ま、昔のものだし、昨今重苦しい話ばかり聞こえてくる状況だし。

「箱のピンクきれいだねー」「松坂屋?あ、違うの!?はははっ」と

一瞬楽しめればOKかなと。

 

 

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Web連載、文房具百年の今月号がUPされました。

「日本の洋式帳簿、その始まりの頃」

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 文房具の話っぽくないけど読んでね。

あと最後の方の写真を見てほしい!