明治時代のインク瓶
4月の上旬からほぼテレワークになり、
休日も食料品の買い出しで近所に行く以外は、建物の外に出ることはない生活が続いている。
出かけないことにそんなにストレスは感じないのだが、
「家にいるので溜まりに溜まっている片付けものができるはず」と思ってはいるものの
それがあまり進まないことがストレスというか、
「自分、しっかりしろ!」という感じになっている。
こういう時は、きれいなものを眺めて
ちょっとした現実逃避をしておくのがよい。(ほんとか?!)
今日紹介するのは明治時代のインク瓶。
古いインク瓶は比較的手に入りやすいが、大正・明治となると
そうはいかない。
特に明治時代のインク瓶で時代が特定できる形、ラベルなどが残っていてカタログなどメーカーの資料と突合せができる形で残っているものはなかなかお目にかかれない。
この「エスエフ商会」は当時の社長、福井庄次郎のイニシャルから来たものだ。
ラベルのデザインが格好いい。
真ん中に四角の立方体のようなマークがあるのは、
当時の福井商店の商標の「三菱」マークだ。
(ひし形3つの組み合わせ。三菱鉛筆とは無関係)
ふたの素材が不思議で、古いインク瓶のふたはたいてい木にコルクをくっつけてあるのだが、
これは白っぽくてとても固い角か牙系の素材のようなものにコルクがつけられている。
明治34年のカタログに掲載されているインクと同じものであろう。
この絵を見ると、左端2つのふたも白っぽく平らなものなので、
当時からこういうふたもあったようだ。
当時、すでに模倣品が売られていたようで、カタログにその注意が記されている。
このインク瓶と一緒に入手したインク瓶がある。
これも明治らしいいいデザインだ。
ラベルを見ると「MARUSHIRO」とあるので日本製だと思われるが、
どこのものかがわからない。
だが、よく見るとボトルにはフランスのインクのエンボスが入っている。
この「NANTOINE PARIS」というのはメーカーの名前だろうか、とふと見たらライオン事務機のカタログにこのインクも載っていた。
瓶のエンボスは「NANTOINE」で、最初のNがどこかに行ってしまったようだが、
このインクのことで間違いないであろう。
おそらくフランスから輸入したものを、ラベルを貼り替えて販売していたのであろう。
そしてペリカンのインクだ。
「ドラゴンのラベルのペリカンのインクを探している」と言っていたら、
いつもお世話になっている骨董屋さんの金田屋リヒトミューレさんが譲ってくれた。
ありがたい話である。
ラベルの左右に感じのような文字が書かれているが、ちょっと違うようなので
中国に簡体文字だろうか。
このラベルのデザインは1904年のカタログには載っているが、簡体文字だとすると、
その後のカタログでも見ることができるので、時代はもう少し後かもしれない。
中身は製図用のインクで、墨に近いものだ。
[1904年ペリカンのカタログと比較]
ちなみにこのインク瓶、とてもガラスが透明度が高いというかクリアである。
この3つのインク瓶がとても好きで、
ぼーっと見つめてしまう。
おまけでもう一つ紹介しておこう。
明治の終わりか大正頃のインク瓶だ。
「東洋ブラック」というこのインクは、おそらく当時大手だった篠崎インキが作った「日本ブラック」というインクをお手本にしたものだろう。
これもやはり明治34年のライオン事務器のカタログに掲載されていた。
もしかしたら、東洋ブラックのほうが先かもしれないが、今となっては分からない。
以上が今日の私の古文房具によるプチ現実逃避だ。
ああだけど、ライオン事務器のインク瓶がオークションで、文具でないガラス瓶多数とまとめて出品されていたため競ってしまい、高額落札になってしまったのを思い出してしまった。
そして文具と関係のないガラス瓶は、オークションに出してしまおう、余裕ができたら、、、と思っていたが、それがまだできていないことも思い出した。
在宅時間が長いうちにやらなければ。
★おまけ★
Webマガジン 文具のとびらの連載「文房具百年」
4月は100年前の鉛筆削りを動画で紹介している。
「手洗い動画と100年前の鉛筆削り器」https://www.buntobi.com/articles/entry/series/taimichi/011478/
見てね。