輸入・廃番文房具の発掘メモ

古い文房具を集めています。見つけた文房具や資料を紹介しています。

イギリスの筆箱に「THE OSAKA」鉛筆

イギリスのオークションで、ブリキの缶ペンケースを買った。

 

正直に白状すると、実は写真では木製に見えて、

木製の筆箱だと思って購入した。

ヨーロッパの筆箱でブリキというのは珍しく、木製が一般的なのだ。

 

だが、表の写真だけでなく、下記のような中身の写真もあったので

それを見れば木製でないことはすぐわかる。

要するに自分の不注意だ。

 

 

 

 

 

しかし、ペンケースが木製でなくてもさほど問題ではない。

このペンケースを購入したのは、中身が気になったからだ。

 

 

 

鉛筆につけペンとペン先、芯ホルダー、携帯用のつけペン・鉛筆ホルダーと刷毛?ブラシ?

そんなラインナップだ。

どれもかなり使い込まれた感じで、状態は良くない。

それはそれで味がある。

そしてこの中の一つがとても珍しいものだ。

 

 

「THE OSAKA」と刻まれた鉛筆。

日本製で、メーカーは「M&I」。

「M&I」は現在の三菱鉛筆の大正時代の社名「真崎市川鉛筆」のことだ。

 

第一次世界大戦の頃、ドイツからの鉛筆の供給が途絶えて、

日本国内で鉛筆産業が発展し、輸出も盛んに行われたらしい。

 

真崎市川鉛筆は明治43年から大正10年までなので

日本が鉛筆の輸出を伸ばした時期と一致する。

 

これは貴重な鉛筆だ。

海外オークションで日本製の鉛筆が出ていても、時代が特定できなかったり

そもそも当時輸出されたものなのか、

欧米のコレクターが日本から手に入れたものかの区別がつきづらい。

 

この鉛筆は、欧米の筆記具と一緒に筆箱に入っており

イギリスのオークションに出ていたことから、

まず大正時代に輸出された鉛筆とみていいだろう。

一緒に入っていた筆記具の時代感も大体それくらいだろうと思われる。

 

「THE OSAKA」

名前もいいではないか。

「TOKYO」もあったのだろうか。どんなパッケージで輸出されたのだろう。

 

こういうものが1本でも出てくると

妄想が広がって楽しいものだ。

 

 

さて、書きたかったことは以上だが、

せっかくなので他の筆記具も紹介しておこう。

 

 

イーグルペンシルのイギリス製の鉛筆。

イーグルの製品にしては刻印がブレており、粗悪な感じがするが、

間違いはないだろう。

 

ノーブランドのペン先。

何か文字が刻まれていると思ってよく見たら「ALUMINIUM」と素材が書かれているだけだった。

形がクラシックでステキである。

 

 

 

これは芯ホルダーだ。芯を掴むチャックがゆるくなっていて、使えない状態。

この手のものはPATENTが入っていそうなものだが、特になし。

メーカーも不明で「Bavaria」とあるのでドイツ製らしいということだけわかる。

 

廉価品というか、一般的に流通していたものなのだろう。

 

ペン軸とブラシ。

一緒に写真を撮ったが、ペン軸にこのブラシがつけられるわけではない。

 

 

携帯用のつけペンと鉛筆ホルダー。両サイドが外せて、それぞれペン先と鉛筆が嵌っているので、ひっくり返してセットして使う。

 

ペン先が斜めにカットしたようになっていた。

カリグラフィー用だろうか。

 

軸も鉛筆もノーブランドで手掛かりなし。

 

 

以上だが、多分このペンケースと中身の筆記具は、

100年以上時が止まっていたのだろう。

筆箱というのはちょっとしたタイムカプセルだ。

崩さずにこのまま保管しておくとしよう。