輸入・廃番文房具の発掘メモ

古い文房具を集めています。見つけた文房具や資料を紹介しています。

トンボと月とチャップリン

スティッキ型の鉛筆を買った。

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これはトンボ鉛筆大正4年(1915年)に発売された鉛筆だ。


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軸には美しい字体でH.O.STICKと刻まれている。
H.Oは「春之助 小川」の略で、トンボ鉛筆創始者のイニシャル。


にゅうっととても長い鉛筆だ。

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写真下のしましまの鉛筆が普通の長さなので、スティッキ部分も合わせると倍近い長さになる。

トンボ鉛筆のスティッキ鉛筆の存在は知っていたが、
こんなに長いと思わなかった。

この軸の色にセルロイドの飾り、軸の美しい字体
大正時代のレトロで華やかな雰囲気をまとっている素敵な鉛筆だ。



さて、この鉛筆を入手して間もないころ、
たまたま海外オークションで見つけた1本の鉛筆。
youtubeを開くつもりが間違えてオークションのリンクをクリックしてしまい、
開いた途端目に飛び込んできたのがこの鉛筆。

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長いスティッキ型の鉛筆。

これはトンボ鉛筆が輸出していたのかと偶然の発見に色めきだつ。


それがこれ。

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J.S.STAEDTLER 「LUNA」
LUNAはラテン語で「月」を意味する。
ステッドラーの鉛筆にMARSと同様によく出てくるマークである。

トンボ鉛筆ではなく、ステッドラーの鉛筆だった。

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ステッドラーさんの方が頭一つ長く、軸も若干太い。
日本人とドイツ人って感じで、この違いに1人ニヤッとしてしまう。


さて、この似たものスティッキ鉛筆達はどういう関係だろう。
トンボ鉛筆の1915年発売は確かだが、ステッドラーの方がわからない。

このスティッキ鉛筆、トンボ鉛筆のサイトによると
チャップリンの短編喜劇映画の流行ともあいまって一大ブームを起こし、爆発的な人気を博した。」との記載がある。

チャップリンはドイツでも流行っただろうか。
そんなところから偶然に同じようなものができたのか、
どちらかがもう片方を参考にしたのか。


トンボ鉛筆ステッドラーを参考にした」
そう思う人が多い気がするが、私は必ずしもそうとは言えない気がしている。

トンボ鉛筆大正6年に出した「ゴルフ型セット」は、アメリカンペンシル製のそっくりの商品があるが、
アメリカンペンシルの方が年代が後になる。
少なくとも私が持っているものは。


類似性の高い商品同士は、少し変えてあるところの無理やり感や
巧妙さが楽しいとともに、「あれ、これアウじゃない?」という感じが
当事者ではない身からすると面白い。

ただ、古い文房具を見てきて感じるようになったのは
古い時代、類似品を作った根っ子にあるのは
悪気よりも憧れだったのではないかということだ。

だから私はこれを「偶然ドイツと日本で同じようなものができた」か
類似品として作られたのだとしても
どちらが先かはわからないし、どちらだとしてもそこには憧れと尊敬があったと
思いたい。


おまけだが、トンボ鉛筆のスティッキ鉛筆にあこがれて、
スティッキ型の筆記具を探していた時期がある。

何年も前だが、その時に見つけたこんなものもある。

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とても細い鉛筆に、スティッキの柄がついているドイツ製の鉛筆、
これも時代がわからない。


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スティッキ鉛筆いろいろ。

なんだか楽しげだ。