「トンボの鉛筆で“ファニーフェイス”というセルロイドの人形がついている鉛筆がある」
そんな話を聞いた。
効果をもたらす言葉である。
高校生の頃、制服で骨董屋さんがたくさん入っているビルに寄り道し
「セルロイドの万年筆」が欲しくて店先で凝視していた頃からの嗜好だろう。
そのセルロイドで出来ているお人形がついている古い鉛筆。
それは欲しい!、見たことないけど。
見たことのない分想像は膨らみ、憧れを募らせた。
その時から早5、6年たったろうか。
やっと手に入れた2本の「ファニーフェイス」
前出のステッキ鉛筆とまとめて5本一緒に入手。
ステッキ鉛筆と同様、長い鉛筆である。
ファニーフェイスは1919年(大正8年)に発売。
創立100年記念サイト(http://www.tombow.com/100th/chronicle.php)にも掲載されている。
色々種類があるようだが、私の下に来たのは
女の子とお侍さん。
お侍さんは、顔の一部が変形している。
軸には美しい模様と字体の刻印。
思えば、見たことのない「ファニーフェイス」を見つけたくて
人形がついている鉛筆を探したことで、
他の面白い鉛筆や可愛い鉛筆が見つかった。
創業当時のこけし鉛筆を見つけたのも、元をたどればこの「ファニーフェイス」を見つけたくて探していた過程のことだ。
つまりこの鉛筆のおかげ(?)で、
ただの鉛筆だけでなく、ちょっとイロモノっぽい鉛筆にまで
私のターゲットが広がってしまったわけだ。
良いのか悪いのか。
上の写真の中で、太く短いスーベニア オブ トーキョーと、頭一つ長いステッドラーの
ステッキ鉛筆以外の5本は一緒に出てきた。
廃業した雑貨屋さんのタンスの中、ほとんど何も残っていなかったところに
この5本が残っていたという。
見本として店頭に出していて、最後に残ったのか。
お侍さんは形が悪いので、商品から外したのだろう。
この鉛筆がたくさん売れたときのことを思い出して捨てられなかったのかな
なんてまた勝手に想像してしまう。
それにスーベニア オブ トーキョーはうまく仲間のいるところに
たどり着いたね、なんてことも思いつつ、トンボ鉛筆3連発はそろそろおしまいだ。
さて、この鉛筆を入手するときに、ちょっとした不安があった。
「保管をどうしよう・・・」
長くて、飾りのついた古い鉛筆。
傷めないように保管するのが難しい。
そこで今回特別にこの鉛筆達を入れる箱を作ってもらった。
レーザーカッター工作が得意な知人にお願いして作ってもらった木製ケース。
鉛筆同士やケースが干渉しないように軸をしっかり支え、その支えるところで軸が擦れないようにフェルトを貼ってあるという丁寧なつくり。
「保管もできて、展示もできるのがいい」というお願いを聞いてもらい、
そのまま立たせて展示もできるスペシャルバージョン。
スーベニア オブ トーキョーは後から出てきたので
あつらえた居場所はないが、なんとなくこの隅っこにはまってるのが
微笑ましい。
せっかくだから、飾りのついた鉛筆を展示する機会があればいいな。