画鋲いろいろ
ずっと忙しくて、ブログに書くのが後回しになってしまったが
今年の1月の骨董ジャンボリーで画鋲をまとめて買った。
今日はその紹介だ。
左上の画鋲は、ケースが変わっている。
ふたの代わりになってるパーツが、画鋲抜きを兼ねている。
画鋲を取り出す穴の上に回すと価値っと止まるようになっている。
PATENTの番号もあるが、調べたが番号では出てこなかった。
昭和20年代以降の特許だと番号では簡単検索できないものが多いので
おそらくそれくらいの時期のものだろう。
中の画鋲は「KK」(と「Y」もだろうか)のエンボスがある。
初めて見るエンボスだ。
金具の横のところに画鋲をひっかける部分がついている。
画鋲を取り外す器具としてはピンセルが有名だが、昔からほかにもあって、
単独の画鋲外し器具や画鋲入れに組み込んだものなどいろいろ工夫されている。
マスク画鋲はきれいな色のビニールのようなカバーがかかっている画鋲が入っていた。
もともとこの中に入っていたものかは不明だが、画鋲の頭を覆っていることを
「マスク」と取れなくもなく、偶然かもしれないが何となくつじつまが合っている。
ちなみにこのマークは「入江商店」という文具メーカーのマークで、「マスク」という商標もいろいろな喪にに使われている。
ASD製図画鋲の中身は、銀色のつるんとした画鋲が入っていた。
下の写真の後ろにちょっとぼやけて写っているのが製図用画鋲なので、
手前の小さい画鋲はもともとここに入っていたものではないだろう。
これだけ見ると、堂ということはないが、
画鋲の種類としては珍しい。
たくさん画鋲を並べたとき映えるタイプだ。
「Licht」の中もエンボス画鋲で、こちらはエンボス画鋲としてはよく見る「DRAWING」と書かれいる。
この「Licht」は現在のリヒトラブさんの画鋲だろうか。
以前はこのスペルだったはずだが、リヒトラブさんかどうかは確認できていない。
ちなみに、一緒に購入したものに画鋲ではなく虫ピンもあり、その中にプラスさんにモノがあった。
筆記体のPlusは旧ロゴだ。こちらは旧社名「千代田文具」の頭文字が入っているのでプラスさんで間違いがない。
ついでに虫ピンはもう一つあった。
「kaname Pin」とあり、初めて見るマークとブランド名だが、
扇のマークがなかなかしゃれている。
もう一つのマークのアルミ缶は中が空だった。
これを買った時、実はほかにもあったが、お財布の関係であきらめた。
にしても、誰かが集めていたのだろうか、
これだけちょっと珍しい入れ物と中身もそれぞれ違っているものがまとまっているのは凄いことだ。
世の中まだまだ知らないものがたくさんあるということだ。
画材カタログより 文房堂と丸善
文房堂のカタログを手に入れた。A5サイズの小さなものだ。
文房堂は、東京の古書店街 神保町にある老舗の画材屋さんで、文房具も扱っている。
以前に大正時代の文房堂さんのカタログを入手したが、今度はもっと古い明治41年発行のものだ。
さて、文房堂さんはいつからあったのだろうとホームページを見ると
明治20年創業!
そして、神保町に店舗を新築しているので、このカタログはそれから間もないころのものだ。
ちなみに同時期のフランスの画材カタログを持っているが、表紙のデザインというか、雰囲気がよく似ている。
当時、洋画材料はほぼ輸入であったであろうし、カタログなども参考にしているのだろう。このおしゃれな字体だけでも、ずっと見ていたくなる。
話がそれたが、文房堂さんのホームページの「文房堂の歴史」を見て意外なことを知った。
創業者は丸善創業者 早矢仕有的と縁戚でともに福沢諭吉の門下生だったと。
そして創業時は早矢仕有的が経営していた書店に間借りしていたそうだ。
http://www.bumpodo.co.jp/company/history.html
そうだったのか。知らなかった。
ではカタログの中を紹介しよう。
最初に文房具が掲載されており、万年筆が数種類載っているのは
丸善との関係を踏まえてみるととても納得感がある。
携帯用のインク入れは、水雷型や、開いて使うものなど凝った形で面白い。
また、万年筆のページは、偶然かもしれないが、レイアウトが丸善の明治40年頃のカタログと似ている。
*丸善文房具目録に掲載されている万年筆。
もちろんカタログの中心は絵具などの画材だ。
文房堂と丸善の関係を踏まえてカタログを見たとき、一番「なるほど」と思ったのがこのページだ。
右側のピンクのページに「商品切手」とある。
「商品切手」とは今でいう商品券のことで、丸善が考案したものだ。
最初は社内用だったようだが、明治31年に発売している。発売されてから10年後とはいえ、丸善と同じようにカタログに商品切手が掲載されているところに
*丸善のカタログに掲載の「商品切手」のページ
文房堂のこのカタログと、これより少し前に発行された丸善のカタログを並べて見ると、
この二社が意外に近い関係にあったと感じるところがあるが、
よく見ると、商品は意外と重複がなく、違ったものを扱っている。
勝手な想像だが、文房具と画材という同じ商材を扱っていた両社は、
協力し合いつつも良きライバルだったのではないかな、
などと想像が膨らむ。
それから、このカタログを入手する少し前に、Web連載「文房具百年」が更新された。こちらも読む、、、いや読まなくても写真を見るだけでもアリだと思う。
「クレヨンと色鉛筆の境界線 ~クレヨンの話の補足~」
https://www.buntobi.com/articles/entry/series/taimichi/010919/
この文房堂のカタログは、「私にも何か載ってるかもよ」と言わんばかりのタイミングで私のもとにやってきたが、残念ながらクレヨンに関する情報はなかった。
だが丸善との関係性という情報を知るきっかけになったのと、明治時代の文房具が掲載されている、それだけで十分だ。
EAGLE PENCIL のつけペン「ARROW」 飛び出せ2020年!
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
今年最初のブログは、昨年見つけた探していた文具から。
ノック式の筆記具だが、ちょっと変わっている。
ノック部分の反対側は、こんな風に一見何もない。
これをノックするとどうなるかというと・・・
ノーーーック!
先端のふたが空くのだ。
円錐形の金属が鎖と棒でノック部分とつながっており、ノックすると押されて開く仕組みになっている。
で、ノックすると出てくるのが
にゅうっと顔を出したのはペン先。
ほらほら、出てきた出てきた!
ペン先が出きったところでノックボタンを戻すと、
ふたになっていた金属が、ペン先を固定するパーツになる。
これは旅行などで携帯するためのペンで、1887年の特許のものだ。
なぜこれを探していたのか。
実は、この特許を転用したペンケースを持っており、兼ねてより元の特許の子のつけペンが欲しかったのだ。
そのペンケースはこちら。
以前Webマガジン「文具のとびら」の筆箱の回で紹介したのと、このブログでもずいぶん前に紹介しているペンケースだ。
そして、特許がこれ。
そうそう、この図の通り!
現物と特許に加えて、派生してできたものまで揃うというのはなかなかない。
EAGLE PENCILというと、鉛筆が思い浮かぶが、実はいろいろなアイデア筆記具を作っている。
なお、ペン先をはめる部分までがオリジナルで、ペン先は汎用性のあるものが使えるようになっている。
そう、このペンは「ARROW」という商品名だ。
下に向けてノックをすると、ペン先がまさしく矢のように飛び出してくるのだ。
で、ちょっと動画を撮ってみた。
「飛び出せ!2020年」というタイトルは、新年なのでこの「飛び出すペン」と「2020年」をくっつけただけだが、
このペンの動きを伝えるのにちょっと動画を撮ってみたら、
意外と簡単に撮れたので、今年はブログに動画を入れるのもやってみようと思う。
そういう意味でも自分的にちょっと飛び出した気分だ。
・・・って動画の埋め込みがよくわからず、とりあえずYouTubeに上げたののリンク張ってみた。
こんなんでいいのかな??
40秒くらいのしょぼい動画ですが
動きは分かるので見てね。
軍用チョークのセット
前回更新から2か月半も空いてしまって、このまま消えてしまいそうだったが、
やめない、まだまだ書くよ。
今回は軍用チョークの話だ。
軍用チョークは文字通り軍隊で使われていたチョークで、
地図に印をつけたり、距離を測るのにつかわれていた道具だ。
ちょっとしたきっかけで、軍用チョークとそれを使用するための器具の存在を知ったのだが、チョークも器具もお譲りしたので手元になく、
同じようなものを探していた。(チョークは一つだけ手元に残っている。)
過去のブログでも紹介しているので、
よろしければご参照ください。
https://tai-michi.hatenablog.com/entry/16284292
https://tai-michi.hatenablog.com/entry/17652169
https://tai-michi.hatenablog.com/entry/17559906
今回見つけたのはこちら。
これはふたを開けたところ。
ずっと探していたので、思わず「あった!」と声が出た。
ふたはこうなっていて、製図用具かと思って、開けずに立ち去りそうだったのだが、
これを持っていた骨董屋さんが軍隊や戦時中のものを中心に扱っている方だったので、中身を確認した次第だ。
チョークと関係なく、うれしかったのは消しゴムだ。
これは「ヒノデムカイドリ」の商標でおなじみ(個人的には)の田口ゴムの消しゴムだ。
〇で囲まれたマーク部分は「M」「r」は分かるが何と書いてあるのだろう。
S.I.PENCILもパッと思いつかない。
品番が昔一世を風靡した(らしい)A.W.FABERの鯨印消しゴムと同じ6006番で、
「ここにもあったか6006番!」という感じだ。
消しゴムが入っていたのはうれしいが、この軍用チョークのセットでは
消しゴムは不要なので、もともとこのセットに入っていたものとは違う気がする。
さて、右側の緑色の箱がチョークだ。
並んでいる文字が興味深い。
一番上の「TACTICS」戦術、戦法からきて、T.K.CHALKの下は、「無鉛・無毒」だ。
チョークに有害物質が含まれていないことをうたっている。
ラベルには「特製 偕行社」とある。
偕行社とは、「戦前に帝国陸軍の将校准士官の親睦・互助・学術研究組織として設立された同名の「偕行社」(旧偕行社)で、戦後は旧陸軍の元将校・士官候補生・将校生徒・軍属高等官および、陸上自衛隊と航空自衛隊の元幹部自衛官といったOB・OGの親睦・互助・学術研究組織として、会名をそのままに「偕行社」として運用されている。」(ウィキペディア)
そうだ。
そして、「偕行社は一種の企業としても一大組織であり、各地の偕行社では将校准士官および見習士官を対象とする軍服を筆頭とする各種軍装品(中略)の製作・販売、および陸軍将校や関係者用の喫茶店・旅館(各地の偕行社に付属)、学校の経営なども広く手がけていた。」(ウィキペディア)
更に、偕行社の商品には五芒星(5つの核を持つ星)のマークがついていたそうで、説明いろいろに「そうそう、あってる!そのとおり!」となる。
なるほど、軍隊の道具を作っている組織のものだったのか。
中のチョークはこういうものだ。
以前見つけた軍用チョークと同様、青とピンクの細いチョークだ。
青が自軍で赤が敵、とか、青が現在地で赤が目的地、みたいな使い方をしてたのではないかと。
一緒にセットされている器具は中にチョークが入っている状態だった。
金具をスライドさせると青とピンクのチョークが出てくる。
これで地図に距離を測りながら、戦略を描いたのだろう。
なぜチョークか。拭けば消えるからだ。
拭けば消えるには利点が3つ考えられる。
一つは繰り返し使えること。もう一つはいざというとき簡単に消せること。
そして消すことができれば、もし地図が見つかっても戦略がばれないこと、かな。
そこで一緒に入っている布の登場だ。
おそらくこれで拭いて消したり書き直したりしていたのであろう。
少し戻るが、このチョークは細いので、折れないように腰高のケースに入っている。
それでも緩かったのか、細く切った新聞紙が巻いてあった。
それを広げてみた。
動乱、国民、時局、東亜、皇国、国防など戦時中らしい文言が並ぶ。
「小泉信」まで読めるが、明治生まれの教育者で「小泉信三」という方がいる。
海外に留学もしているので、おそらくこの人のことだろう。
「ライオン軍」とあり、調べてみると「松竹ロビンス」というプロ野球チームがあり、1937年(昭和12年)秋 - 1940年(昭和15年)までこの名前だったらしい。
ということは、おそらくそのころのものだろう。
他の軍用チョークも昭和12年頃のものと推測されるので、
時代感もあっている。
戦争をモチーフにした文房具は多いが、軍隊で実際に使われていた文房具というのは
軍隊手帳以外は、実はあまり知られていない。
そして、戦争で使われていたチョークの鮮やかで優しい色合いは、見るたびに悲しい気持ちになる。
このセットを使っていたのは、戦略を立てる将校さんだろうか。
見ると、器具の中に入っているチョークは使用中だが、箱に入っているのは
未使用だ。
壊れやすいチョークがこの状態で残っているということは、きっとこのチョークの持ち主は無事に帰還したのだろう。
そう想像して軍用チョークの紹介はここでおしまい。
そして、軍用ではないが、前から追いかけている「色チョーク」、クレヨンについて、文具のとびらの連載「文房具百年」に記事を書いた。
長いけど、いったん自分なりのクレヨンの歴史をまとめたので
ぜひ読んでほしい。
「日本のクレヨンとその歴史1」https://www.buntobi.com/articles/entry/series/taimichi/010387/
「日本のクレヨンとその歴史2」
https://www.buntobi.com/articles/entry/series/taimichi/010760/
ステッドラーの消しゴムとエジプト政府
自分は地理に疎いので、いろいろな国の名前を見て
「どのへんの国だったっけ?」となってしまう。
ヨーロッパと南米とオセアニアくらいは何となく区別がつくが
その程度のレベルだ。
ワールドカップとは関係ないが、
エジプトってどのへんだったかな?
と思ったことがあったので、場所がわからないつながりで
無理やりワールドカップの話から入ってみた。
エジプトどのあたり??となったのはこの消しゴムのせいだ。
ステッドラーの木軸消しゴムだ。
四角い棒状なので、一見消しゴムとはわからないが、鉛筆の芯の要領で
中に消しゴムが入っている。
黒っぽいのは、インク用消しゴム。
砂消しだ。
白い消しゴムは鉛筆用。
プラスチック消しゴムのないころのものなので
天然ゴム製の消しゴムだ。
ナイフで削って使うのだが、
とても立派な材質に見えるので、削るのは容易なことではないだろう。
で、エジプトがどうしたって!?
そうそう、ステッドラーのマークの反対側がこうなっている。
「EGYPTIAN GOVEMENT」
エジプト政府のステッドラーの消しゴムということだ。
ドイツとエジプトの関係について何かわかるかとさらっと調べてみたが
特にこれといって見つからなかった。
エジプト本国で使われた消しゴムではなく、ドイツのエジプト大使館などのものかもしれない。
この手の木軸の消しゴムは、見ているとそこそこ発見できるが
実はステッドラーのものはかなり珍しく、且つ軸がこのようにニスが塗られて
ピカピカの高級感漂うものはさらに珍しい。
そこにエジプト政府と刻まれていると、
「なんだこれ?」と謎感が膨らんでくる。
だが、今のところそれ以上の情報はない。
うーん、たぶん何もわからないんだろうな。
でもステッドラーの木軸の消しゴムを入手できただけで
とりあえずうれしい。
アメリカの選挙用鉛筆
選挙になると、投票用紙に使われるユポ紙の鉛筆による書き心地の良さが話題になる。
海を渡ったアメリカには、選挙用の鉛筆というものがあった。
一見ごく普通の鉛筆。
投票用紙にはっきり書ける、というわけではない。
アメリカの老舗鉛筆メーカー DIXONの鉛筆だ。
その名も「ELECTION(選挙) PENCIL」
何が選挙用なのかというと、答えは鉛筆の後ろにくっついているこれ。
よく消しゴムがつけられているところに
しっかりしたワイヤーがついている。
ワイヤーの先は、固定するための金具。
そう、この鉛筆は投票用紙に記入する場所に固定することができる鉛筆だ。
なぜ固定するのか。
持って帰ってしまう人が後を絶たないのだろう。
何ともアメリカらしい。
この鉛筆はごく一時期販売されたもののようなので
今、投票所の鉛筆がどうなっているかは不明だ。
削り方のわからない鉛筆削り
こんなものを手に入れた。
「鉛筆削り」だそうだ。
実用新案の番号があったので、調べてみた。
確かに鉛筆削りだ。それも大正時代の。
だが、これどうやって削るかわからないのだ。
出っ張りが4つ、その下に刃が組み込まれている。
ちなみに出っ張りは空洞だが、鉛筆が通るほどの大きさではない。
刃ではない方は、ギザギザになっている。
が、芯を研ぐ感じではない。
柄についている穴もうーん、単に紐とか通すだけなのかな。
裏側は何だか複雑な仕組みになっているようだが、
接合されていて、ナイフのようにどこかが開くというものではない。
実用新案の申請文章を読んだが、いまいちわからない。
多分、表に突起がついているから、安全だというのと、
大体鉛筆の幅くらいに区切ってあるので、刃が長持ちする(するのか!?)といったところのような気がする。
削り方は多分シンプルにこうなのだろう。。
この出っ張りのおかげで力を入れやすいという利点はあるようだ。
昨日の割に見た目が派手だ。
それに実用新案登録されても実際は商品化しなかった(できなかった)ものもあるだろうに、
造ちゃったんだ、これ。
まだまだ面白いもの、あるんだなぁ。
★お知らせ★
Webマガジン 文具のとびらの連載「文房具百年」
最新稿UPされました。
今回は「スポンジケースと仲間たち」
とてもピンポイントなものを入れてみました。
この連載にしては短め・軽めです。
読んでね。
https://www.buntobi.com/articles/entry/series/taimichi/010196/