輸入・廃番文房具の発掘メモ

古い文房具を集めています。見つけた文房具や資料を紹介しています。

舞踏会の手帖

先週3/25は銀座の五十音さんで「ノンアルコールバー”トオン”」というのをやりました。

臨時ママと少人数のお客様で、テーブルをはさんで
おしゃべりするイベントです。

用意していったのは舞踏会の手帖とそれ用の鉛筆、
カタログなどなど。

大人数対象ではなかなかお見せしづらいものや
説明しきれないものなので、
至近距離で直接モノに触れながらのおしゃべりは大変楽しい時間でした。


その時に持って行った舞踏会の手帖ですが
改めて確認するとブログでちゃんとご紹介したことがなかったですね。

ということで、トオンに間に合わなかった一つの手帖を加えて
3つの「舞踏会の手帖」をご紹介します。

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もとは紙製石盤やセルロイドのメモ帳など
「書いて消せるノートや手帳」に興味を持ち、
舞踏会の手帖に行きついて3つ手に入れました。

舞踏会の手帖は書く部分が、何かの角や牙系のような素材で作られているものが多く
これらは鉛筆で書いて消すことが出来るので
繰り返し使えます。

もちろん紙が使われているものもあり、
これらは中身を入れ替えたのか、使い捨てだったと思われます。

そもそも舞踏会の手帖ってなに?といったところですが
舞踏会でダンスの順番を書くのに使ったらしいです。

女性が舞踏会に身に着けていくものですから
大体小さく、美しい装飾が施されているものも多く見られます。

私が最初に入手した舞踏会の手帖はこれです。

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地味ですね。笑

だって、豪華なのはお値段も豪華なんですもの。
装飾品としてほしいわけではないので、
「書いて消せるタイプ」で
出来れば何か書いてあるものがいいなと探していて
見つかったのがこれです。

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何か書いてあるのですが、残念ながら読めません。

あと
筆記具のホルダーがあるのですが、筆記具自体はついていません。
この筆記具のホルダーにあう鉛筆を探したのですが
太さにしてつまようじくらいで
持っている鉛筆の中には合うものがありませんでした。

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よく見ると、ホルダーがつぶれているので
本当はつまようじより少し太い筆記具がついていたのかもしれませんね。


そしてその次に手に入れたのがこちら

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今度は筆記具がちゃんと付いています。

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小さい繰り出し式のシャープペンシルがついており、
太さの合う芯があれば今でも使えそうです。

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この複雑な形に中身のプレートも切り抜かれています。
先日トオンでこちらをお見せした際に
「この形に切り抜かれているのがすごい」という感想があり、
「なるほど、確かに!」と思った次第です

これはパッと見たところ何も書いてません。
書いていないと思っていました。

ところが昨年、ふとしたことがきっかけで裏側に記載があることに気付きました。

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1913と書いてる!
きっとこれは1913年頃に使われていたものです!
104年前ですよ!
すごいなぁ。面白いなぁ。

そして1913年がわかっただけで満足し、そのまま忘れていたのですが
今回トオンにこちらを持っていくにあたり、
何が書いてあるのかが気になりました。

そこでフランス語を勉強している友人へ読んでもらえないか相談したところ、
友人はフランス語教室のフランス人の方に聞いてくれました。

内容を聞いてびっくり。
友人から来た訳は下記のとおりです。

Souvenir de
mon cher et
bien aimé pauvre 
Victorin - cadeau
offert au 1er
Janvier 1913

愛しい、大好きな亡きヴィクトランの想い出
 - 1913年1月1日に贈られた贈り物

こんなにドラマチックな内容が書かれていたなんて
驚きました。
友人の話だと、単語と意味で訳してくれた人たちの間で一部意見が分かれたそうですが
この友人が送ってくれた訳が気に入ったのでこれで良しとしました。


この訳をもとに想像は膨らみます。

この舞踏会の手帖、モチーフがジャンヌ・ダルクなんです。

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トオンでこの訳とジャンヌダルクがモチーフであることを説明し、
「きっとこれを贈られた女性は、ヴィクトランにとってジャンヌダルクのような
女性だったんだよ」と私が言うと、
「女性の名前がジャンヌだったに違いない」という説もでてきて、
更にお客様で来てくれていたある友人は
「これはヴィクトランから贈られたものではなく、きっと遺品整理でもらったんだよ」
と夢をぶち壊す説も出てくるなと
100年以上前のことを勝手に推測して、あーだこーだ言っていました。

ヴィクトランと、この手帖の持ち主だった女性からすると、
大きなお世話ですが、
古い文房具はそんなことが楽しかったりします。

なお、手帳の大きさは手のひらくらいです。

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(「遺品整理」説の友人が「指にはめて使った」説も繰り出していたので
はめてみましたが、さすがにそれは無理があるようです)


この素敵な一文は、鉛筆で書いてあるので
間違えて消えないように、大事にしたいと思います。


そして3つの目の舞踏会の手帖は、トオンには間に合わず、
翌日届きました。

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扇型の手帖です。

この形がとても好きで、
手ごろなものを探していて、やっと入手しました。

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閉じるとこうなります。

大きさは手のひらより少し大きいくらい。

これは思ったより大きかったです。

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でもまぁ、そうですよね。横幅もないのであまり小さいと
さすがに書けないでしょう。

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元はリボンで留められていたのですが
劣化して取れてしまったのでしょう。
部分的に張り付くように残っているだけでした。

そして筆記具。
これは鉛筆がついていました。

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とても小さな鉛筆です。
削った跡があるので実際にこれで書いていたのでしょう。

先日入手したA.W.FABERの鉛筆と比べると

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あまり変わらないのですが、この手帳の鉛筆の方が若干細く、
FABERの鉛筆はこの手帳のホルダーには入りませんでした。

どこまで細い鉛筆が作られていたのか
興味が沸きます。。。がここではそれは置いておきましょう。

そしてこれも「何か書いて」あります。

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1~12の番号が見れますが、
これはダンスの順番でしょうか?

一体舞踏会は何曲くらい踊るものなのでしょう?

番号の上に書かれた言葉はなんとかいてあるのでしょうl?

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毎回番号を書き直すのが面倒なので、消えない筆記具で
番号を書いたのでしょうか?

番号の後ろに書かれたことを取り消し線で消しているのも残っています。
これは踊り終わった人を消したのでしょうか

鉛筆で消すところを、間違えて消えないもので線を引いてしまったので
この手帳は使わなくなったのかな、、、

勝手な想像は膨らみます。

大きなお世話ですね(笑)


舞踏会の手帖も手帳用の鉛筆も
日本では縁遠く、またその形や装飾は現代から見ると非現実的に感じられます。

でも、この小さなものに小さな筆記具で、みんながメモを取っていたという必死さが
私は一番時代を表していると思います。

舞踏会のダンスの相手は当時さぞかし大切な情報だったということでしょう。

「書いて消せる手帳」という興味から始まりましたが
ちょっと違った意味で興味が広がりつつあります。

高級品なのでなかなか増やせませんが
面白いものがあればまた手に入れたいと思います。