輸入・廃番文房具の発掘メモ

古い文房具を集めています。見つけた文房具や資料を紹介しています。

戦時中の文具券と墨の箱

今年の2月~3月で展示をさせていただいた八重洲文具室。
今後の展示は「モリイチの歴史展」です。

そのモリイチの歴史展に、展示協力しています。

大正から昭和初期、戦後~70年代まで複数の世代で
「当時販売されていたもの」として
私の古い文房具が展示されます。

ほんの数点ですが、
資料を見ながらできるだけその時代に合ったものを選びました。
行かれましたら見てやってください。

八重洲文具室  〒104-0031 東京都中央区京橋1-3-2
6月25日(木)から7月9日(木)
平日9:00~18:00です。


今回その展示用の文房具のお題で
昭和19年当時の物」というのがあったのですが、
手持ちの文具を探していて、
面白いものを見つけました。

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正確には、前から持っていたのですが
紹介する機会がなかったものです。
且つ文房具でもないのですが。


戦時中の文具購入券。

今でいうと、文具券みたいなもの・・・と
文具券ももうなくなっていましたね。

戦時中、物資が不足していた時期に
この券がないと文具を買えなかった、ということだと思います。

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学校名と校長先生の名前がスタンプで捺されています。
期限は昭和19年1月20日まで。

この券で引き換えられるのは、コンパスとなっていますが
いくつも種類があったようで、
一緒に綴じられていた束の下のほうは
絵具でした。

そういえば、絵の具が不足してきて
公定価格を決めるためのルールの設定を行った記事について
以前ブログに記載しましたが
それが昭和17年のことでした。

だんだん厳しくなっていく状況が分かるようです。

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結構厚みのある束で、
糸で丁寧に束ねてありました。

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戦争色の濃い文具や広告は数多く見られますが、
この文具購入券の束からも
とてもリアルに時代を感じられます。

記載してある学校名は

調べてみたら、こちらの学校のようです。

昭和16年から22年まで「栗生国民学校」という名称だったようなので
多分間違いないかと。


昭和19年にこの文具購入券を配布していた小学校が
今もあることにほっとしています。

ちなみにこの文具購入券は、墨の箱に入っていました。




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こんな感じです。

箱のデザインがいいなと思ったのと、
この購入券が面白いと思って入手しました。


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奈良の松寿堂という所の墨の箱です。

松寿堂さんも調べてみました。
室町時代から続く老舗の墨のメーカーさんのようで、宮内庁御用達なのかな。
今も営業していらっしゃいます!

墨も「奈良墨」という伝統産業に当たるようです。

また箱に貼ってある「奈良製墨工業組合」も
名前を変えながら存続しているようで
この名称は昭和16年から22年だそうです。

栗生国民学校と同じ期間ですね!


なお、墨のことは、書道に詳しい友人に助けてもらいました。

そしてその友人から松寿堂の墨の画像も拝借。


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墨は全く分かりませんが、
カッコいい墨ですね!



いずれにしても、登場人物や会社を調べると
分からなかったり、すでに廃業しているといったことが多い中
栗生国民学校・奈良松寿堂さん、ともに現存しているというのは
うれしいことです。

些細なご縁で知ったわけですが
今後ますますのご発展をお祈り申し上げます。

僭越ではございますが。