今回の展示で出している中に、大正~昭和初期頃のクリップがあります。
ゼムクリップではなく、紙束などをはさむような少し大きめのクリップです。
というと、展示をご覧いただいた方や、展示品の写真を見られた方は
このクリップを思い出して下さる方がいらっしゃるかもしれません。
かなり大きめのクリップで、形は今もあるのですが、
年季の入った風情と、マークに迫力があります。
今と全然違いますね。
明治から昭和初期くらいまでの古いライオンマークは、
描写が細かいと言いますか、
リアルです。
さて、これはそれなりの「アンティークだぞ」というオーラがあるので
タイトルにした「ふびんなクリップ」ではありません。
もう1種類、恐らくこのクリップと同時代と思われるクリップを展示しています。
そのクリップの箱はこれ。(箱は展示していません)
中身です。
薄紙に一つ一つ包まれたこの感じ、いいですよね。
錆止めなんでしょうね。
そのため、今も全く錆びていないきれいな状態です。
あれ、紙から出すと、特徴のないのっぺり普通なクリップが。
これです、ふびんなクリップは。
特徴がなさすぎて、アンティークというオーラが全くと言っていいほどなく、
展示されているのに、誰にも気づかれないクリップ。
普通でしょ?
実はちゃんとマークとかも入っているんです。
このマークについて調べてみようと「DAICHO」「クリップ」と検索してみたのですが。。
お勧めできません、その検索は(笑)
これホントにそんなに古いの?と思われても仕方のないクリップなので、
根拠をご紹介すると。。。
昭和6年の資料です。
そこに同様の形のクリップが掲載されています。
メーカーが違うので、マークは異なりますが、
形はほぼ一緒。
そしてこの資料だけでなく、大正~昭和初期の資料に時々出てきます。
この形、特徴がないとはいえ、今はない形ですよね。
資料を見ていても、もう少し後の時代になると
いわゆる「目玉クリップ」になっていて、この形は見なくなります。
ということで、おそらく大正~昭和初期のクリップなんですよ、これ。
でもほんとオーラがないですよね。
錆びてないところがますます時代を感じないアンティーク文具です。
ちなみにたくさん入手したこともあり、私も日常的に普通に使ってます。
ところで、このクリップ、展示会場のどこに展示されているのでしょうか。
はい、ここです。
鉛筆削りのディスプレイになってます。
このえんぴつけずりのディプレイを見て、
よく気付く方が数名「鉛筆もわざわざ古いものを使っているところがすごいですね」
と言って下さいます。
でも「ディスプレイに大正時代のクリップを使っているのもすごいですね」
と言ってくれた方は、残念ながらいません。
無理ですよね、このクリップ。(笑)
そして、先日のトークショーで、時間があればこのクリップの話をしようと思ったのですが
時間切れで紹介できませんでした。
不憫なクリップはどこまでも不憫ということです。
これから展示をご覧になる方がいたら、
「ああ、あれもアンティーク文具なんだな」と思って
見てやってください。
私からもよろしくお願い致します。