輸入・廃番文房具の発掘メモ

古い文房具を集めています。見つけた文房具や資料を紹介しています。

「日本と欧米のアンティーク事務用品展」ありがとうございました。

9/24から開催しておりました「日本と欧米のアンティーク事務用品展」は
昨日10/10 無事終了いたしました。

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アンティークとは言え「事務用品」
見た目の華やかさが少なく、
見た目も重量もヘビー級なモノ達ばかりなので
好みが分かれるところですね。

前回の「大正・昭和のアンティーク文具展」の続きをイメージしてくださった方には
ちょっと期待外れだったかもしれません。

とはいえ、とても熱心にご覧いただいた方や、
私の一方的な説明を楽しそうに聞いてくださる方などがいらして
やっぱりやってよかった!と思いました。

余談ですが、「タモリ倶楽部見ました」とおっしゃってくださった方が
結構いまして、テレビってすごいですね。

残念だったのは、動かさないと面白さがあまり伝わらない物が多かったこと。
ディスプレイで動画を流せたらよかったなとか
もっと見せ方を工夫できたんじゃないかなとか

反省はいろいろです。

そんな展示ですが、展示内容をざっとご紹介。

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アメリカのホッチキスです。
一番左のNo1が日本に入ってきたところから始まります。

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No1がかっこいいので、
日本の各メーカーはNo1をお手本にして、
もっとカッコいいのをつくろうと思いました。

そして鳩やライオン、フクロウやイカシタ文字が入っているものなど作り
「安くて優秀」「いつまでも使える」などとうたい文句を添えて売り出しました。
(すみません、脚色入ってます 笑)


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当時、すでに針なしホッチキスもありました。

向かって右側はアメリカの製品です。
今でも通用しそうな右端の2つのハンディタイプは1910年頃特許を取得しています。
日本制の3つのうち、左端の2つは大正7年の特許です。
どれも、止め方は同じですが、アメリカ製の方が
作りがしっかりしています。

全体的にそうですが、
アメリカのこういった事務用品は
とてもがっちりしていて、作りもシンプルです。
そのため、今でも案外しっかり動きます。

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変ってパンチと綴り具。

右から2番目の黒いものは割ピン用のパンチです。

日本にも割ピンは昔からあるのに
割ピン用のパンチは見かけないですね。

勝手な想像ですが、
きっと日本には家庭にも会社にも「千枚通し」があって
それで穴を開けられるので
わざわざ割ピン用のパンチはいらなかったのではないでしょうか。

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割ピンを知らない方のために。
割ピンとはこんなものです。
ピンが2枚付いていて
広げることができるので、書類を止めたりするのに使います。

真中の箱は、多分戦前の物。右の丸いものは
戦後恐らく昭和20年代~30年代くらいかと。

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綴じ具というと「文化綴り」「軽便綴り」というものがあります
昭和初期くらいから、恐らく昭和30年代くらいまであったと思われますが
小さいとげがついているクリップで、手動ホッチキス針みたいな感じです。
少ない枚数であれば割としっかり止まります。

これも100年位前からアメリカのO.K.という商品が出回っているので、
日本をそれを参考にしたのではないでしょうか。

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アメリカから入ってきたものとしては
鉛筆削りもそうですね。

明治時代に回転刃が入ってきていますが
ヒットしたのは左側の「Chicago」

カタログや広告を見ても鉛筆削りのことを「チカゴ削り」と言っているものがあります。

ヘビー級が得意なアメリカにしては珍しく
セルロイドをつかった華奢なデザインです。

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こまごましたものも
展示してたんですよ。

だいたい右側が欧米、左が日本です。

糊のふたや、切手を濡らす道具、ラベルやクリップなど
用途は同じなのに、ちょっとした工夫の違いが面白いです。

あと、日本の机上の事務用品はガラスがよく使われていますが
欧米はガラスより陶製だったり金属だったりの傾向があるように思います。

そういう所も、国ごとの得意・不得意や
原料の流通などにも影響されているのかもしれませんね
(ちゃんと調べていないので、全然違ったらごめんなさい!)

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最近地味に好きな糊は
日本は海綿、アメリカはふたにバネを仕込んで中から糊が出てくるようにしています。

また、切手を濡らす道具も、日本は海綿、アメリカは陶製のローラーを回すことで
水分を持ってくるという方法を取っています。

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日本色が強い事務用品として、名刺関係と用箋や伝票を展示しました。

これは名刺ファイルの台紙。

日本の名刺は身分によって大きさや紙質を合わせないとマナー違反になると
古い文房具の業界紙の記事で読みました。

これはいろいろなサイズに対応できるように作ったところ
美しい文様になったという事でしょう。

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一緒に星名刺の見本帳も展示。1926年、大正15年のものです。
開いているページは、婦人用の花名刺
今でも舞妓さんなどはこういった名刺を持っているそうですよ。

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実用箋と無地の封筒。

用箋は、ばらばらに集めた中に「国」とつくものが複数あることに気づき、展示しました。
時代は大正後半から昭和一桁位と思われます。
左上の「国の誉」とあるのはコクヨさんの製品です。

また、昔の封筒は帯が美しいですね。
封筒を受け取る側には伝わらない、使う側の自己満足ともいえるところに
手間暇をかけているのは
昔の文具の特徴でもあると思います。

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昭和初期くらいの伝票。
枠のデザインが綺麗です。

中上のコクヨの伝票は複写式で、
1枚目の紙が虫の羽のように薄くて繊細な紙です。

と、このあたりの紙はあまり欧米の影響は受けていないのかなと思ったのですが、

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今回、展示の準備をしていて気付いたことが。

帳簿と一緒に展示していたこの開いた帳簿のようなもの。
パッと見た感じ、今と変わらない感じですよね。

これは、帳簿の罫線の見本帳なのですが明治時代の見本帳です。

この頃から変わっていなかったのか!ということに驚きです。

江戸時代はこんな帳簿の付け方はしていないでしょうから
明治になってからアメリカから入ってきたとして
恐らく入ってきた当時からずっと変わっていない。

なぜ変わらないで来たのか
ちょっと興味がわきますね。
完成されていたと言ってしまえばそれまでですが。


あとは1915年頃の日本と、1925年のアメリカと、1920年のフランスのカタログを並べて展示。
展示しているものが、展示しているカタログに掲載されていることに
気付いてもらえたかな?

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大正時代 日本

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1925年アメリカ。

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1920年 フランス

だいたい同じくらいの時期に
欧米と日本で同じようなものが流通していたこと。
それを日本は次々と作りなおして自国のものとして展開していったらしいこと。

そんな文房具の発展の歴史
みたいなものも
もう少し伝えられれば良かったですね。


何はともあれ、今回も良い経験、良い勉強になりました。

ご来場いただいた皆様
ツイッターFACEBOOK、インスタグラムで応援してくださったみなさま、
設営を手伝ってくれた素敵なはんこ屋さん、
こんな地味なテーマを通してくださったモリイチの皆様に
心より感謝いたします。

完成が遅れまくった図録は
またいつか、何かの時に販売したいと思いますので、
機会がありましたら、是非お手元に一冊お買い求めくださいませ。

どうもありがとうございました。