展示内容をあれこれ考えていると、忘れていたものが出てきたり、
気づかなかったことに気づいたりするものです。
そういえばこれがあったなと思いだしたのが
キングジムの古いファイル。
氏名、住所、電話番号の記載できるカードを1枚づつ挟めるようになっているファイルです。
表紙の内側には、このサイズで紙を切り取れるように
「切り抜き用セルロイド定規」がついています。
なんだか、最近売り出された「紙を切るための定規」みたいですね!
いつ頃の物だろうとキングジムさんのホームページを参照すると、
「1927年 創業者・宮本英太郎が特許人名簿、印鑑簿を発売。」とあります。(キングジム ホームページ)
では、このファイルがキングジムさんの始まりだったのですね。
PAT番号があったので調べてみると、昭和8年の番号でした。
丸公マークもありますし、このファイル自体は大よそ昭和10年代後半といったところかと。
表紙。かなり見づらいのですが、布張りで、「KING」「名刺人名簿」とエンボスされています。
背表紙です。
かなり使い込まれており、ほとんど消えていますが、
「人名簿」と「鷲」(ですよね)のマークがかろうじて見えます。
販売当時は、この背表紙の文字は恐らく金で飾られていたのでしょう。
このファイルからキングジムさんが始まったのかと思うと
重要な物の気がしてきます。
そしてもうひとつ、コクヨさんの「和帳」
「製品保証」
いいですね。
中は罫線の入った和紙が綴じられています。
品番は「62」だそうですよ。
そして、下には「62」「百」という文字が。
62は品番だとして、「百」はなんでしょうね。
百円ではいくらなんでも高いし。
というか、ここでいつもの疑問。
「いつの時代のもの?」
コクヨさんのホームページに情報を探しに行きました。
そうしたら、なんとコクヨさんはこの「和帳」からスタートしたようです。
ホームページに同じものと思われる和帳が掲載されていました。
ただ、ロゴの変遷を見ると
カタカナの「コクヨ」となるのは昭和になってからのようです。
ということは昭和初期の物でしょうか。
そしてもう一つ、情報を見つけましたよ。
と記載があります。
では、品番62と一緒に記されていた「百」は
「百枚だよ!」という意味ですね。
なるほど。納得です。
たまたま思い出した2つの古文房具が
現代において新商品を次々を出しているメーカーの始まりのものだったというのは
おもしろい偶然ですね。
更に見ていて思ったのは
用途に合わせて、柔軟に中身を変えられる「ファイル」に対して
用途に合わせて、紙の罫線を変えた商品である「帳票」
最終目標は、仕事に必要なフォーマットが使えるように
だと思いますが、製品自体は全く違うところが
おもしろいですね。
この2冊、並べて展示しましょうか。
*** 追記 ***
このブログを見て、コクヨの方が詳しい説明をしてくださいました。
せっかくですので、そのまま掲載させてい頂きます。
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写真のものは「洋帳仕立ての和帳」と思われます。
いわゆる和式帳簿から洋式帳簿へ移り変わる過渡期の製品、
和帳の中では最も新しい部類のものと推測できます。
コクヨが国内メーカーとして初めて洋式帳簿を既製品化(※)したのが1913年、
(※それまで、帳簿は店や会社ごとのオーダーメイドが主流で、
今み たいにお店で売っているものを1冊から買うことはできなかった)
これがきっかけとなって洋式帳簿の需要が拡大したのが1917年。
和帳はその後昭和20年頃まで使われていたということです。
商標をみてみると、「国誉」とあらためたのが1917年、
商標がカタカナ表記になるのが1930年前後と言われているので
写真の帳簿はおそらく昭和初期頃の品と思われます。
ちなみに「国の誉れ」の「国」は創業者の出身地の富山のことですが、
商標は郷里だけではなく日本の誉れにもなるようにという意味で
朝日と桜(※)があしらわれています。
(※本居宣長 の歌「敷島の大和心を人問わば朝日に匂う山桜花」より)
上の光線が7本、下が5本、桜が左右に3つというのは
「七五三」の縁起を担いだものだそうです。
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こうやって教えていただけるのは
有難いです。
次に和帳について調べるときは
まず自分のブログを見ることにします。