輸入・廃番文房具の発掘メモ

古い文房具を集めています。見つけた文房具や資料を紹介しています。

キングジムの人名簿とコクヨの和帳

来週からの展示に向けて準備中です。

展示内容をあれこれ考えていると、忘れていたものが出てきたり、
気づかなかったことに気づいたりするものです。

そういえばこれがあったなと思いだしたのが
キングジムの古いファイル。

イメージ 1



イメージ 2

氏名、住所、電話番号の記載できるカードを1枚づつ挟めるようになっているファイルです。

イメージ 3

表紙の内側には、このサイズで紙を切り取れるように
「切り抜き用セルロイド定規」がついています。

イメージ 6

イメージ 7

なんだか、最近売り出された「紙を切るための定規」みたいですね!


いつ頃の物だろうとキングジムさんのホームページを参照すると、
「1927年 創業者・宮本英太郎が特許人名簿、印鑑簿を発売。」とあります。(キングジム ホームページ)

では、このファイルがキングジムさんの始まりだったのですね。

裏表紙の内側にはキングジムさんの古いロゴマークが。

イメージ 4

イメージ 5


PAT番号があったので調べてみると、昭和8年の番号でした。
丸公マークもありますし、このファイル自体は大よそ昭和10年代後半といったところかと。



イメージ 10

表紙。かなり見づらいのですが、布張りで、「KING」「名刺人名簿」とエンボスされています。

イメージ 11

背表紙です。
かなり使い込まれており、ほとんど消えていますが、
「人名簿」と「鷲」(ですよね)のマークがかろうじて見えます。

販売当時は、この背表紙の文字は恐らく金で飾られていたのでしょう。

このファイルからキングジムさんが始まったのかと思うと
重要な物の気がしてきます。



そしてもうひとつ、コクヨさんの「和帳」

イメージ 17


薄い紙のカバーは虫食いあとが目立ちます。
でも、この一枚をはがすと、割ときれいな状態です。

イメージ 8

表紙を開くと、コクヨさんのおなじみのマークが。

イメージ 9

イメージ 12

「製品保証」
いいですね。

中は罫線の入った和紙が綴じられています。

イメージ 13


品番は「62」だそうですよ。

イメージ 14


イメージ 15


そして、下には「62」「百」という文字が。

イメージ 16


62は品番だとして、「百」はなんでしょうね。
百円ではいくらなんでも高いし。

というか、ここでいつもの疑問。
「いつの時代のもの?」

コクヨさんのホームページに情報を探しに行きました。

そうしたら、なんとコクヨさんはこの「和帳」からスタートしたようです。
ホームページに同じものと思われる和帳が掲載されていました。

ただ、ロゴの変遷を見ると
カタカナの「コクヨ」となるのは昭和になってからのようです。

ということは昭和初期の物でしょうか。

そしてもう一つ、情報を見つけましたよ。

中身の枚数も100枚としながら96枚とか98枚の商品が多かった中、正確に100枚であることにこだわり「正百枚」と表示しました。』(コクヨホームページ コクヨクロニクルより)
と記載があります。

では、品番62と一緒に記されていた「百」は
「百枚だよ!」という意味ですね。

なるほど。納得です。


たまたま思い出した2つの古文房具が
現代において新商品を次々を出しているメーカーの始まりのものだったというのは
おもしろい偶然ですね。

更に見ていて思ったのは
用途に合わせて、柔軟に中身を変えられる「ファイル」に対して
用途に合わせて、紙の罫線を変えた商品である「帳票」

最終目標は、仕事に必要なフォーマットが使えるように
だと思いますが、製品自体は全く違うところが
おもしろいですね。


この2冊、並べて展示しましょうか。



*** 追記 ***

このブログを見て、コクヨの方が詳しい説明をしてくださいました。
せっかくですので、そのまま掲載させてい頂きます。


=============================
写真のものは「洋帳仕立ての和帳」と思われます。
いわゆる和式帳簿から洋式帳簿へ移り変わる過渡期の製品、
和帳の中では最も新しい部類のものと推測できます。

コクヨが国内メーカーとして初めて洋式帳簿を既製品化(※)したのが1913年、
(※それまで、帳簿は店や会社ごとのオーダーメイドが主流で、
 今み たいにお店で売っているものを1冊から買うことはできなかった)

税務署が単式簿記から複式簿記への記帳の促進を図り、
これがきっかけとなって洋式帳簿の需要が拡大したのが1917年。
和帳はその後昭和20年頃まで使われていたということです。

商標をみてみると、「国誉」とあらためたのが1917年、
商標がカタカナ表記になるのが1930年前後と言われているので
写真の帳簿はおそらく昭和初期頃の品と思われます。

ちなみに「国の誉れ」の「国」は創業者の出身地の富山のことですが、
商標は郷里だけではなく日本の誉れにもなるようにという意味で
朝日と桜(※)があしらわれています。
(※本居宣長 の歌「敷島の大和心を人問わば朝日に匂う山桜花」より)

上の光線が7本、下が5本、桜が左右に3つというのは
「七五三」の縁起を担いだものだそうです。

=============================

こうやって教えていただけるのは
有難いです。

次に和帳について調べるときは
まず自分のブログを見ることにします。