輸入・廃番文房具の発掘メモ

古い文房具を集めています。見つけた文房具や資料を紹介しています。

新美術の広告と絵具の公定価格

文房具の広告もなかなか楽しい物でして、
図案が素敵なモノも多いのですが、
意味不明のキャッチコピー時代を反映しているものなどいろいろあります。

雑誌に掲載されているものは、比較的安価で手に入れられるので
骨董市で広告の載っていそうな雑誌があると
ひっくり返して裏表紙を確認しています。


先日「新美術」という雑誌に
文房具や画材の広告があったので入手してきました。
昭和17年の9月号と10月号です。

裏表紙は、美術誌らしくホルベインさんと文房堂さんの広告です。
印象的だったのは、ホルベインさんの広告が
戦争色が強かったこと。

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9月号は兵隊さん

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10月号は戦闘機。



画材と戦争というのは、どうにもイメージが結びつかないのですが、
広告に反映させざるを得ない、又はさせた方がいいだろうという
時代だったのでしょう。
昭和17年 1942年戦争真っ只中。

ちなみに文房堂さんは、普通の広告です。(笑)

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そして大阪のカワチ文具さん。

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中に鉛筆の広告もあったのですが、
こちらも普通の広告です。

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トンボ鉛筆さんや三菱鉛筆さんが戦争色の濃い広告を出すのは
もう少し後ですかね。

余談ですが、三菱鉛筆さんのキャッチコピーは
よくわからないものが多い気がします。
少し考え過ぎ?かな(笑)


この2冊の「新美術」で面白いと思ったのは
丁度公定価格(政府が物価調整の為にモノの値段を決める制度)が
丁度絵具にも適用されることになり、そのあたりの事情が
事細かに記載されているところです。

木村荘八さんの記事ですが、有名な方ですよね、確か。
私でも聞いたことある名前です。

「ホワイトの絵の具が不足していて申込制になります」
から始まって
「価格を決めることになったが、そもそも品質基準がないじゃないか」
だから、「A品B品の基準を明確にし」、
「工場からも情報をちゃんともらって」、「適正な価格を付けるんだ」、
「そのために委員会を設けるんだ」、
ということが9月号に書いてあります。

そして次の10月号には続報として、
東京工業大学無機化学研究室の先生が、
 絵具係で参画してくれることになった。
 いやぁよかったよかった」(←こんな雰囲ということです)
みたいなことが書いてありました。

なかなかリアルな感じがして面白いです。

今まで公定価格と言ってもいつのもの何か
覚えられずに、出てくるたびにネットで調べていましたが、
もう覚えましたよ。昭和17年頃(物によってスタートはずれるようです)です。


と、わかるようなわからないような話をしましたので、
レトロな絵の具の写真で締めましょう。

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みさくら絵具。
中がとても可愛いです。

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絵具のこの色の名前がいいんですよね、かわいらしくて。
時代はわかりませんが色が漢字表記なので
戦中くらいのものかもしれませんね。

と、記憶に引っかかるものが。
先日クレヨンの展示をしたときに、確かこれのクレヨン版を見た。

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ほらそっくりでしょ!
と並べてみましたが、

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メーカーが違う。

この関東化学業を調べたら、冷蔵庫とか金属系のメーカーでした。
クレヨンを作っていたとは思えない会社ですが、
昔、金属塗装をやっていたようなので
もしかしたらその流れてクレヨンも作っていたのかもしれません。


とはいえ、なんでこんなにそっくりなんでしょうね。
マネをするほどどちらかが有名だったとも思えないのですが。


ちょっとした謎が残りました。