澤井商店と文房具好きの女3人
文房具好きの女子大生の萌さんという可愛らしいお嬢さんがいます。
文房具のイベントなどで知り合いました。
先日、萌さんが骨董市で見つけた古いホッチキスを
FACEBOOKで紹介していました。
「天馬」と書いてあるそうです。
大正時代のホッチキスと聞くと、自分の興味とちょっとした負けん気から
「調べなければ」と思うわけです。
まず昭和4年の文具製造業別名鑑で、天馬の商標を探します。
ありました。
どうやら澤井商店という会社のもので、
他にクラウン印のホチキスもあるようです。
澤井商店は聞いたことがあります。
持っている資料の中にも広告があったはず、
そう思って探したところこんなものが出てきました。
ホチキスでも「クラウン」印を出していたようですが、
王冠鉛筆なども出していて、「王冠」がメインの商標なんだなぁと思いました。
そして「菊水インキ」
これは広告資料以外で、見たことがあるぞ、でもインキ自体は持っていない。
なんだっけ?
今一スッキリしないながら、見つけた情報を萌さんに報告。
するとそこに、大阪の文具メーカーや文具商に詳しい
古文房具仲間のアルトさんが
「王冠事務用品の看板を持っている!澤井商店の商品を入手し損ねた!」と
参加。
いつか王冠事務用品の看板の前で、澤井商店のホッチキスの写真を
撮りましょう!なんて話で
盛り上がっていました。
(このあたりは萌さんのfacebookのコメントで展開されています)
数日後、私は紙製石盤を紹介する機会があり、
いくつか持ち出した紙製石盤を並べて
ぼんやりと眺めていました。
あれ。
今、眼が何かつかんだ。
菊水インキと書いてある。
広告?
広告だけど、「発売元」と書いてある。
ん?
表を見直すと。。。
澤井龍池堂と書いてあるよ。
これって
澤井商店の紙製石盤だ。
「菊水インキ」に見覚えがあったのは
これだったのか。
そういえば、滋賀が得意な骨董屋さんに譲ってもらったものだ。
西の方から出たというのも
辻褄が合う。
改めて澤井商店について資料を探すと
昭和36年の「全国文具紙製品商工業界団体史」に掲載がありました。
この紙製石盤は、明治時代なので、まだ「澤井商店」ではなかったんですね。
「もともと砥石・硯からスタートしていて石盤を作っていた。」
これは石盤ではなく、紙製石盤ですが、得意分野だったのでしょうね。
少しづつ符号があっていきます。
おもしろいなと思い、ブログに書こうと萌さんとアルトさんに
掲載許可をもらったところ
アルトさんから追加情報が。
「今は曙商会さんと一緒になっている」
さっそく曙商会さんを調べます。
すると今の社名が「アケボノクラウン」さん
澤井商店の商標が王冠(クラウン)なので
なるほどですが、澤井商会からクラウンに社名が変わり、その後合併したのかが気になります。
昭和54年の大阪の業界資料にありました。
大阪クラウンさんの代表者が沢井さんなので、
こちらの会社で間違いないと思われます。
大阪クラウン → 合併してアケボノクラウンとなったとして
気になるのは、割と最近まで王冠マークの文具を出していた「クラウン」なのだろうか
という点です。
うちにあるのはこの消しゴムと
このペン軸です。
この新しい2つの商品は「澤井商店」のものといっていいのか
確認は取れていません。
またアルトさんの所有する看板も
時代はわからないのですが、大正~昭和初期のものだと思われます。
と、はっきりしない点があるものの、
これで澤井商店の明治・大正・昭和のものが見つかったわけです。
今回、萌さん、アルトさん、私と
世代も文房具と関わるきっかけや関わり方もそれぞれ違う3人が
たまたま見つけて持っていたものが、同じ会社のものでつながっていました。
モノがつながって、合わせて情報もつながって広がりました。
アルトさんは
「そうやって点が線になって面になるんですね」と
言っていました。
まさしくその通りですね。
自分一人で見つけた情報よりも
人のつながりを介してわかったものの方が
今後ますます広がりそうな気がします。
澤井商店の紙製石盤の裏にかかれた謎の鉛筆の絵。
「ステッドラー」と「嗚呼忠臣」「MASASHIGE」が一緒に描かれている鉛筆
3人の引きと情報力でいつかこの謎の鉛筆も
実物が見つかるかもしれません。
■5/8追記
別件の調べ物をしていたら
昭和4年頃の店舗の写真がありました。
とてもかわいらしい店舗なので掲載します。