実用品?木製硯
骨董市で、木製の硯を見つけた。
かなり使い込まれている。
「戦時中の代用品?」と思ったが、そもそも「木製」って墨をすれるのだろうか。
それに水分が木に吸い込まれてしまうのでは???
とりあえず、気になったので買ってきた。
裏面には、印字されたような文字と「平野」は持ち主の名前であろう。
平野さん達筆だし、かなり汚れており、それ以外の文字が平野さんが書いたのか、
商品に印字されていたのかがよくわからない。
「矢〇用」と読めるが、真ん中の字は「寫」だろうか。
「矢寫」で調べると漢文?のような書籍に使われていることを確認できたが、意味は分からない。硯に書いてあるので書き写す的な意味ではないだろうか。
そして、これはいったいどういうものか。
実は特許番号が書かれているようなので、調べられるかもと思って
入手した。
「特許一五九一」とある。調べてみると、出た!
「桐硯」というもので、明治23年出願、25年に登録されている。
戦時中の代用品ではなく、明治23年は1890年なので130年以上前の発明品だった。
内容を見ると、桐材で形を作り、その後石灰水に浸し、松脂やアルコールを混ぜたものを塗るらしい。
なるほど、そうすれば中に染み込まなさそうだ。
だが擦れるのか?
特許の説明に「磨墨用」とあるが、これはどういうものか。
これはコトバンク出てできた。
「するすみ」と読むようで、「(磨(す)って使うところから) 書画に用いる墨。また、墨の色。」とあるので普通の墨を言うようだ。
うん、つまりこれで墨も擦れたのだ。
実際、写真ではわかりづらいが、中央部分がかなりささくれており、へこみもある。
この桐硯のメリットは、安くて軽いことらしい。旅行などに持ち歩くのにいいだろうということだ。モバイル硯とでも言おうか。
入手したものは、かなり使い込まれているので、実用に足るものであったのだろう。
なかなか味のあるものを手に入れた。
さて、これを見て私の記憶によみがえったものがある。
かなり前に骨董市で手に入れて、そのままになっていた木の硯があるのだ。
現物がどこか奥深いところにあるようで見つからないが、購入時に撮った写真が出てきた。それによると2014年、8年も前だ。
購入した時は、戦時中の代用品と思い込んでいたが、
この硯は「千年硯」という商品名で、実用新案の番号が5480とあり、そのあたりの番号は明治40年頃だ。
(ちなみに探したがこの番号はほかの内容の特許なので、出願で終わっているかもしれない)
少なくても、昭和の代用品ではなさそうだ。
説明書に「ナゲテモコワレヌ」とあるのが面白い。
ちなみにこちらは未使用で、まとまった数が出ていたと思う。
売れなかったのかな、と当時思った記憶がある。
どちらの硯も興味深い。