一般的には重要なのは中の写真やハガキなのですが、
私の場合は写真やはがきより、それを収納しているファイルの方に目が行きます。
そして実際素敵なデザインのアルバムやはがき帖は多くあるものの、
状態がよくなかったり、なによりたいてい中に写真やはがきがたくさん入っているので
その写真やはがきを無視してファイルやアルバムとして買ってくるというのはなかなかできません。
そんな中、中身のない素敵なハガキファイルを2つ手に入れました。
「美術葉書帖」と「POSTKARTEN―ALBUM」です。
POSTKARTENはハガキのドイツ語。
メーカーなどはわかりませんが、恐らく日本製だと思っています。
というのも中のはがきと差し込むための切り込みが
美しい文様になっているのです。
古いものの価値としてアルバムやファイル自体が注目されることは
あまりありませんが、日本の古いアルバムはこの切れ込みのデザインが凝っていることが多いです。
このPOSTKARTEN―ALBUMもそこがいいなと思って
入手しました。
縦でも横でも収納できるように工夫されています。
縦はこうかな。
ああ、今気づきましたが、対角線の角だけでなく4角を挟めますね。
横はこうなります。
単なる直線の切れ込みではなく、形があることで
額装した時のように見えます。
昔の日本人のこだわりと工夫が感じられるところです。
なお時代としては、こちらのアルバムは昭和初期くらいかと。
もう一つの「美術葉書帖」はもっと古く、中に「明治38年」とメモが貼ってあったので、
それを信じることにしましょう。
表紙のラベルの感じでは大正頃かなと思うのですが、
中の台紙の模様の細かさは
確かに明治時代の雰囲気があります。
アールデコが流行る前の文様かな。
美しいですね。
蛇腹式になっていてかなりの枚数を挟むことができます。
そしてこの葉書帖は開くとまずこんな張り紙が。
こういう文字が読める友人に読んでもらいました。
「無断此の内の絵葉書
抜き取るべからず候」
だそうです。
この葉書帖の中にはこんなものも挟まっていました。
つまりこの葉書帖は美術絵葉書や写真を販売しているお店で使われていたもの。
恐らく見本帳にしていたのでしょう。
そしてお客様が「これくださーい」と見本帳から見本を抜き取って持ってくるとか
もしかしたら勝手に持ち帰られていたなんてこともあったかもしれませんね。
それで張り紙を貼っておいた、そんなところでしょう。
100年も前にこの葉書帖がどのように使われていたとか
置いてあったお店で何か来ていたのかなんてことが
ちょっとした手がかりで具体的に想像できるというのは
面白いです。
なお、こちらの葉書帖は中に2枚だけ葉書が残っていました。
強風でかさがおちょこになってしまっている絵です。
美術絵葉書という感じではありませんが、
親しみやすい楽しい絵柄です。
それに色の濃淡に全く色むらがない事に目が行きます。
そのためかユニークな絵なのに上品な印象を受けます。
・・そういえば、風邪でかさがひっくり返ってしまうことを
「おちょこになる」って言いますか?
私が子供のころは普通に使っていたのですが。
今書いて気づきました。
傘がおちょこ=ひっくりかえってしまう、の意です。
もう一枚がこれ。
ぶんぶく茶釜の絵ですね。
こちらもシンプルだけど、グラデーションに色むらがなく
腕の良い方が描かれたものではないかと。
他はどのような絵葉書が挟んであったのでしょうね!
張り紙の毛筆の内容を読んでくれた友人と話していました。
「抜き取るなって書いておいたのに、
結局この2枚以外は抜き取られてしまったね!」