大正時代の缶ペンケース
※なんと!開明さまから情報をいただいたので補記します。(2021/2/9)
骨董市で、黒の缶ペンケースを見つけた。
私にとって缶ペンケースと言えば1980年代頃のナツカシ文房具で、
そのあたりの文房具は基本興味の対象外である。
「違うな。」
そう思って通り過ぎようと思った時に、「TAGUCHI」と書かれていることに気づいた。
古文房具好きな自分にとって「TAGUCHI」というと
「日ノ出向鳥」商標の消しゴムメーカー田口ゴムと
開明墨汁の田口商会(現開明株式会社)の2つの会社が関わっている可能性のある重要ワードだ。
通り過ぎるのをやめて一歩戻ってよく見ると
「Kaimeiboku Tuzuribako」と書いてある。
※「Kaimeinoku Suzuribako」でした。筆記体のTに見えるが、Sもこのように書くことがあるそうです。誤字などと言って失礼しました。
これは開明墨汁の缶ペンケースだ。
漢字にすると「開明墨 綴り箱」?だと少しおかしいので、
「開明墨 硯箱」と書きたかったのではないかと思われる。
ということは、中身は80年代の缶ペンケースではない。
昔の携帯用の文房具セットだ。
中には小さなガラスの瓶に、墨を入れる小さな墨池、というのだろうか、綿がセットされていてふたがついている。
あと、竹の棒のようなものがあるがこれは筆だったものの残骸だろう。
通常は筆を入れておく。
かなり傷んでいるが、開いた左側の一番上の丸い容器は朱肉?のようなものが入っていた跡が残っている。
瓶は、ふたを閉めているときは寝かしているが、
起こすこともできるし、金具から外すこともできる。
裏ブタにはしっかり田口商会の商標「梅鉢マーク」がある。
このタイプの筆墨を携帯する用の筆箱は「文具筥(箱)」といった名称でよく見かける。
時代としては明治~大正であろう。
その時代にこの英字表記のデザインは、最先端のオシャレさだったのではないだろうか。
前回のブログで紹介した開明墨汁の容器もきれいで上質な感じだが、
こちらもまた違った良さがある。
やるじゃないですか、開明さん。
※表の「S,TAGUCHI」の「S」は創業者の田口精爾氏のイニシャルであろうとのこと。田口精爾氏は大正末期に亡くなられていることを考えると、大正時代のものと考えることができるとのこと。
そしてオシャレな文具箱をほかにも見つけたので
一緒にご紹介。
これもかわいい。お財布か小さなカバンのような形をしている。
「KABAN BUNGU」という名前だと思うが
これも(?)BUNGUの「U」が二つに分解されてしまい「JJ」となってしまっている。
(開明墨のほうは間違いではなく「綴り箱」なのかもしれないが)
英字スペルの認知が低かった時代ということで
却って時代感を感じる。
中身の構成は基本同じ。
お掃除していないので汚れてるが、大体同じものがセットされている。
瓶がないが写真一番下のところにもしかしたらセットされていたのかもしれない。
あと一つ、これもなかなかいい感じだ。
表に花鳥が浮き彫りになっている。
余計なお世話だが、裏から見ると
ちょっと細長いロケットみたいな造形でなんだか格好よく見える。
「甚造」君が持ち主だったようだ。
「甚造」君、どんな人だが存じ上げないが、何となく繊細そうな人物を想像した。
これは瓶がついていないタイプだったようだが、
この小さなガラス瓶がついているペンケースって、
今でもアリじゃないかなとちょっと思った。
墨じゃなくてインク、筆じゃなくてつけペンかガラスペン。
余談だが、こういった「文具箱」は文房具を集め始めた最初の頃から存在は知っていたが、
「墨筆は興味ないから」と言って手を出さないで来た。
だがなんだかんだで最近数が増えだしている。
あああ、またターゲットが広がってしまったのか。
よく考えろ、自分。
今日紹介した以外にも持っているので、いつか紹介しようと思う。
そのときはよろしく。
ちなみに「大正時代」は推測。
モノとしては昭和にはほとんど使われていなかったと思われるが
明治まで古くないカナ的な感じで対象とした。