伊東屋客扱い方の研究 大正元年実業少年
昨日、伊東屋で販売されていた無針紙綴器についてアップした際に
もう一つおまけネタを掲載しようとしたのですが、
長くなってしまったので断念しました。
そのまま「またいつか~」とすると、
恐らく忘れてしまうので、無理やり今書いています。
実業少年という雑誌を入手しました。
大正元年のものです。
その中に「十二大商店、客扱い方の研究」という特集があり、
この号は伊東屋さんが対象でした。
具体的にどういう記事かというと、覆面調査員が店舗に行き、
客を装って店員の対応やお店の状況をレポートし、評論家?がそれに評価を加えるというものです。
当時の伊東屋さんの店構えはこれです。
評価は店員さんの対応は概ね高評価、お店の通路が少し狭いことと
空き箱などの片付け、領収書の内容などに指摘がありました。
こんなことをやっていたんだ、というのと同時に
十二大商店に伊東屋さんが入っているというところが興味深い。
さらに、お店にあった当時の文房具が出てきます。
”店員を呼んで赤色鉛筆を見せてもらった。一番上等のはと訪ねて二本買うことにした。
(鉛筆の刻印はババリア製、ア、ベ、ファーベル、マニュファクチュアル2351号)”
これはA.W.ABERの鉛筆のようです。
”キルク製のペン軸1本を買い、硝子玉を入れたペン拭き、硝子製ロール式の郵便切手の
糊ぬらし器などを見て”
キルク製 →コルク製のペン軸はわかるのですが
「硝子玉を入れたペン拭き」これはどういうものでしょう。
「硝子製ロール式の郵便切手の糊ぬらし器」
これはこんなものでしょうか。
階下へ降りてきて
”陳列箱の上にのしかかるように萬年筆(まんねんふで)を見ていた客は、、、”
萬年筆(ふで)とはなんでしょうね。
萬年筆(万年筆)とは別のものでしょうか。
なんとなく筆ペンのようなものを想像します。
商品だけでなく、店員さんの対応についてもリアルに描かれており、
当時のお店の様子を思い描けます。
”舶来品と国産品があって、店員が「高い舶来品を買う必要はない、国産で十分」と言った。
正直でよろしい”という記載があったりします。
お客様としては「正直でよろしい」でしょうが、お店からすると教育不足となりそうですが、
その時代の緩さもまた好ましく感じ出ます
伊東屋さんの客扱い方の研究は以上のようなところですが、
おなじ号にこんなページがありました。
「忘れてはならぬことを忘れぬようにする十法」
ここにも文房具がちらほらと。
「メモに記載する」の中に「メモにも種々ある。紙のものも陶器のものも」
陶器のメモ!
持っていませんが、見たことがある。
ニスをかけずにざらざらのところに鉛筆で書くんです。
それがこんなところにさらっと出てくるくらい
普通に使われていたのですね。
第七法に「万年筆にメモを貼っておけ」というのもありますね。
第九法はには
「小さな紙片で裏に糊をつけたもの」が出てきます。
これは付箋紙のことだと思いますが
この時まだ付箋紙という名前が定着していなかったのでしょうか。
当時の人にとっては珍しくない文房具が
今見るとなんだかわからないものだったり、表現が違っているのは
当時と今の使われるもの、使われ方の違いでしょう。
古い文房具を集めていると
見つけたその一つが、広く使われたものなのか、たまたま誰かが持っていた一般的ではないものなのか、
それを知ることは難しいです。
こういう文房具を紹介する目的ではない資料にたまたま書いてあることは
時にその時代の文房具を知るのにとても役立ったりします。