推定時代は明治初期、丸善のインク瓶
オークションでインク瓶がまとめて出品されていた。
こんな感じだ。
インク瓶は保安場所も取るし、結構持っているので特に欲しいものでない限り
最近は控えている。
が、これの中に「特に欲しいもの」があったのだ。
このインク瓶たちはなかなか面白いものがそろっており、一番に目が付くのは靴型で瓶を持ち上げる金具がついているものだ。スタンプインキもライトインキ、チャンピオンインキなどの篠崎インキの製品だが、「サンライト」という商品名のものは初めて見た。
手前の黄色いラベルが付いているのは「オシドリインキ」でラベルのイラストがかわいい。
だが私が特に欲しかったのは、真ん中の四角い瓶だ。
写真を拡大しよう。
ラベルの右下に「Z.P.MARU」と印刷されているのが見える。
実際のオークションの写真はもう少し斜めに映っていたので「Z.P.」しか見えなかった状態だが、これはもう「Z.P」とくれば丸善の旧社名「丸屋善八商店」の英字表記に他ならない。
「Z.P」表記の意味に誰も気づかないでー!と願いながら入札し、無事落札することができた。
ラベルはあまり質の良くない紙に、白黒印刷。
書かれていることは「BRILLIANT BLUE BLACK」「WRITING FLUED」「TOKYO」
それに「Z.P.MARUYA &CO,Ltd」とある。
丸善製のインク瓶はそこにMのエンボスが入っているのだが、それもない。
さて、このインク瓶はいつごろのものだろう。
丸善のインクの歴史は古く、明治11年には自社製品を扱っていたとのことだが、当初は「安井敬七郎」という人物が製造し納めていた。そのため明治20年頃のインクの広告を見ると瓶のラベルには「YASUI」と書かれている。
その後安井敬七郎氏は丸善に入社したが、しばらく「YASUI」の表記は残っていたようで、そこに「丸善工作部」も併記されるようになったようだ。
その後は「丸善インキ」に変わっていると考えると、「Z.P.MARUYA」のインクはどこで出てくるのか?
私は安井敬七郎氏によるインクの取り扱いが始まる前ではないかと推測した。
自社で作ったものではなく、輸入インクを自社のラベルを貼った小瓶に移して販売していた時期があったのだろうと推測した。
明治12年には海外OEMで「Z.P.M&Co」という鉛筆を販売していた丸善だ。
インクも同様のものがあっておかしくないだろう。
ということは、このインク瓶は明治の11年より前の可能性がある。明治一桁かもしれない!これは凄いではないか。そう思ってみると、ガラスも今まで見たどんなインク瓶よりゆがみがあり質が悪いように見える。
あくまで推定とはいえ、嬉しいものを手に入れた。
ここで終わってもいいのだが、他のインク瓶も簡単に紹介しておこう。
いくつか不可解な点があるインク瓶。
不可解な点①瓶をリストアップさせる金具だが、おそらく写真の角度で中のインクが少なくなった際にかかと部分にためるようにするものだと思うのだが、、、
実際はこの写真のように逆の角度でないと不安定である。
かかとが下がる角度で建てると、ちょっと触るとすぐ金具が閉じてしまう。
これ失敗作ではないか?
不可解な点② 時代がわからない。この形はたいてい明治から大正初期くらいまでの形なのだが、それにしてはガラスの質がいい。気泡やゆがみがなく、とてもきれいにできている。
ガラスの質を考えると昭和になってから作られたものではないかという気がした。
不可解な点③ これはインク入れではなく、インクを入れて売られていたのだろうか。
基本インク瓶は使い捨てであることを考えると、一つ一つにこの金具を付けていたのかと考えると、手間とコストが見合わない気がしてしまう。
と謎が多いが、面白いものなのでこれはこれでよい。
オシドリインキ。単純にラベルの絵がかわいい。
サンライト スタンプインキ。
篠崎インキ製品で「ライトインキ」が一押し商品なので、派生的な名称の「サンライト」というのは初めて見た。
いつ頃のものだろうと調べたら、「サンライト」の商標を見つけることができた。
これを見ると昭和6年以降の商品となるようだ。
サイトにインク入れだが、これは特に特徴がないといえばないが、
笑っているように見えるのが面白い。
今回は以上だ。
後半が雑であることは否めないが、2か月も空いてしまったので
とにかく続けるぞと自分に気合を入れるためのような回なので
詳細はご容赦いただきたい。
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