はさみの中の2ミリの写真(明治時代の万能はさみの続き)
※11/8一部修正
先日「明治時代の25通りのはさみ」を紹介した。
明治時代の25通り万能はさみ - 輸入・廃番文房具の発掘メモ
それから気になってしばらくオークションをチェックしていたところ、
よく似ているはさみを見つけた。
説明書などが付いているわけではないので、
本来であれば「パス」するのだが、
一つ、「おお!」という機能?がついていたので
思わずぽちっとしてしまった。
なので今日はそれを紹介しよう。
右が前回のはさみ、左が今回入手したはさみ。
パッと見あまり変わらない。
ハンドルが交差する少し上の丸い金具の形が違うので
もしかしたら用途が違うかもしれない。
あ、ちなみに前回書き忘れたと思うけど、このはさみ、ばらばらにできてナイフのような使い方もできる。
そして今回入手したはさみの追加機能?は指を入れるわっかの首元のところ。
赤い丸が付いているところに何かある。
よーく見ると、何やら絵のようなものが、、、
おおお、写真だ!
なんと3ミリほどの丸いレンズのようなものに
女性の写真が組み込んである!!!!
すごいなー
ちなみにこれは目を至近距離に寄せると見えが、少し離れると写真があることすら
わからない。
元の持ち主よくぞ見つてくれた。
こういうことは気づかれないと、存在自体が消えて行ってしまうので
無事これが見つかっていて、保護出来て、ここで紹介できたのは
とてもいいんじゃないかな。
なんでこんな仕組みにしたのかな。
女性の写真とか大っぴらに持っていると没収されるとか
そういう事情でもあったのかもしれない。
そしてこの写真が仕込んであるバージョンは、前回紹介した「このはさみが載っているカタログ」にはなかった。
※11/8 追記
写真が組み込まれているはさみの画像はなかったが、説明書きに記載があるのを見つけてくれた方がいて、ツイッターで教えていただいた。
丸善のカタログの説明にある
「嵌入の小鏡玉中には日露戦争の写真を装填したれば、又以て戦勝の記念にするに足る」
という文言は、この小さな写真のことを指しているのだろう。
これを読んだとき、意味不明とスルーしてしまったのを思い出した。
教えてくださった方に感謝!
うん、とにかく見つけられてよかった。
竹製穴開け器
珍しい道具を見つけた。
一穴パンチ、と言えばいいのか。
先端のとがった金属の棒で、紙に穴を一つ開けるものなので、
一穴パンチで間違ってはいないと思うが、
現代のパンチのように丸い穴が開くわけではない。
竹製でよくできているが、商品ではなく器用な個人が作ったものかもしれない。
普通個人の手作り品はあまり興味は持たないのだが、
これは面白いと思った。
モノ自体が面白いところもあるが、
海外から来た文具・事務用品とは違って
日本らしい道具という気がしたからだ。
海外では割ピンパンチというものがある。
*割ピンパンチ
これは紙に穴をあけて割ピンを通すための道具だ。
中央の先端がとがった金属の棒は平たいので、紙には縦長の穴が開く。
竹製の穴開け器もこれと同じようなものだが、日本の場合はおそらく穴に通すのが割ピンではない。
紙のこよりだ。
日本にも明治時代から割ピンは来ていたが、紙を閉じるのに使われていたのは
割ピンより「͡こより」であろう。
この竹の穴開け器が海外の割ピンパンチを参考にしたかというと
その可能性は低い。
割ピンパンチはほぼ日本に入って来ていないか
あったとしてもごく一部だ。
それに紙に穴をあける道具として、日本で昔から主に使われた道具は「目打ち」がある。
最近は見かけなくなったが、一昔前は各家庭や事務所に1本くらいはあった道具だ。
だから目打ちで紙に穴をあけるのが嫌になった誰かさんが
自作したものだろうと踏んでいる。
割ピンとこよりという違いがあるにもかかわらず、
欧米と日本で同じような道具が作られていることを
面白いなと思うのだ。
冷たい雨の日は明るい色の古文房具を。ギターペイントの輸出用?クレヨン。
今日は冷たい雨が降ってる。
日中は、ドタバタを片付けをしていたので、
冷たい空気が気持ちいいくらいだったけど、
落ち着いて座っていると肌寒い。
もう10月も後半なのだから、
まぁそうだよね。
片付け≒集めた文房具をしまい込む
なものだから、
しまい込んでしまう前にいくつか写真を撮っておいた。
その中から、こんな日こそ、明るい色の文房具がいいなぁと思って。
クレヨン。
箱のデザインがとても気に入っている。
それにこれ、ギターペイントのクレヨンだ。
ギターペイントはマジックインキで有名な寺西化学の
絵具やクレヨンのブランドだ。
全部英語表記だし、デザインもアメリカっぽいので
輸出用なのかな。
中のクレヨンの巻紙も英語。
そして、オークションで手に入れたのだが、
一緒にあったクレヨンや色鉛筆も英語表記。
「OIL CRAYONS」の方は、メーカー名など全く不明。
でもこの箱も元気の出るデザインだ。
「THREE HORSE」はクレヨンではなく色鉛筆で、これだけでなくあと2つ
やはり色鉛筆があった。
こちらは「THREE HORSE」がメーカー名かブランド名なのだろうが
詳しくは分からない。
MADE IN JAPANの表記はないが、アメリカのオークションで時々見かける
「THREE HORSE」という鉛筆があり、それが日本製なので
おそらく同じメーカーのものだろう。
いつごろかな、昭和40年代あたりかな。
お、よく見ると、ギターペイントのクレヨンの箱の飛行機に
「727」と書かれている。
ボーイング727か。でもそれっていつからあるんだ?
(‥‥‥Wikipedia参照中‥‥‥)
ボーイング727はアメリカで路線に就航したのが1964年なので
やっぱり昭和40年頃のクレヨンだろう。
アメリカの子供たち用なので
日本の子供はこのクレヨンを見る機会がなかったと思うけど、
見たらきっと好きになっていたんじゃないかな。
特にこの飛行機のやつ。
明治時代の25通り万能はさみ
前回に引き続き、久しぶりの大江戸骨董市で見つけたものの話。
このはさみが目に留まった。
やたらといろいろなところが凸凹していて、
虫食い、はないにしても何かにかじられたかのようなはさみだ。
私がこのはさみを見ていることに気づいた骨董屋さんは
「裁縫用のはさみですよ」と言ったが、私は違うと思った。
「これってあれだ。同じものではないかもしれないけど、違っても仲間だ」
「これってあれだ」のあれはこれだ。
明治40年代の三越のカタログに、よく似たはさみがあったはず、
そうこれ。
ほら、とてもよく似ている。
はさみに刻まれている商品名?がカタログは「UNIVERSAL」で且つドイツ製だが、
私が入手したはさみは「UNIVERSUM」と刻まれておりイギリス製だ。
ちょっと違う、惜しいなぁ。
まてよ、もう一つ見たことがある。
そうそうこれ。
そして25通り、18通り、14通りの3種類載っているが、18通りと14通りはドイツ製の用だ。
だが、25通り、これがおなじやつではないかな?
どちらも「UNIVERSUM」とありイギリス製を示していると思われる
「ENGL.」の表記がある。
よし、これと同じものということでいいだろう。
さて、なぜこのはさみが欲しかったのか。
それはもう「25通りの使い道があるはさみ」で
おまけに明治時代のものとなれば、
「すごい!」×「何ができるの?」となり
興味津々なのだ。
ところが、このはさみを実際手にしてわかった。
正確には分からないことが分かった。
はさみのあちこちにあるくぼみやカーブ、目盛りでいろいろなことができそうなのは分かったが、具体的に何ができてどう数えたら25種類の機能になるのかが
さっぱりわからないのだ。
間違い探しクイズならぬ「機能探し」クイズ、
それもかなり高いレベルの
のような感じだ。
ほんとは25種類解明してから紹介したいところだったが
全く解明できそうな気がしないので
とりあえず紹介することにした。
細かいところの写真を載せるので
よかったら考えてみて欲しい。
ハンドルには左右それぞれ小さくて回るパーツがはめ込まれている。
パーツがはめ込まれたそばに、切れ込みがあるが、
回るパーツと関係あるのか、別物なのかがわからない。
この半円型の部分は鉛筆削りか何かだろうか。
この円筒のねじのようなものはおそらくパーツが欠けていて
本来は転がして長さを図る、マップメジャーだったのではないかと思う。
刃の縁のギザギザはやすりだろうか。
また合わさる部分の内側に円を描くように目盛りがあるのは角度を測るのだろうか。
刃にもハンドルの部分にも目盛りがあるのは長さを測るためだろう。
また、刃の上の方にあるギザギザのある円弧のような部分は
ねじを締めるため?
刃先の外側にある小さな穴も何らかの機能だろうが、何のためかわからない。
ここまでで、何をするのかわからないものも含めて見つけた機能らしいものは
10を超えるくらいかな。
25通りの半分もわかっていないということだ。
これ、きっと「それも数に入れるの無理!!」みたいなものの
入れて25なんだろうな。
それはそれで面白いので
とにかくやっぱり25通りのラインナップを全部知りたい!
でも、考えても多分解明できないので
説明書を探すしかない、
気がする。
仕方ない。
探すか。。。。
篠崎インキの石版印刷広告
久しぶりに国際フォーラムの大江戸骨董市が開催されたので、
早速足を運んでみた。
コロナ禍後初の開催であり、感染防止のため仕切りを設けるなど運営が変わった初回ということもあり、9時に回りだした時には
多くの骨董屋さんが商品を並べ終わっていなかったし、
おまけに雨までぱらついて、商品に覆いがかけられているお店も多かった。
一巡したが、特に何もなかったので帰りかけたのだが、
いつも珍しいものを持ってきてくれる骨董屋さんが、
「よかったら後でもう一度寄って」と言っていたのを思い出し
もう一度一通りまわってみることにした。
そしてそのおまけの一巡で見つけたのがこれ。
A3サイズくらいのきれいな石版印刷の広告だ。
額に入れられていたので、全く見ていなかったのだが
ふと「ゴム糊」の文字が目に入った。
ああ、これは篠崎印刷の明治から大正頃のものだ。
「第45回内国勧業博覧会」とあるが、
時代的に第4回・第5回の両方を指しているのだろう。
篠崎インキの主要販売元であったライオン事務器(当時の福井商店)の大正元年のカタログに
ここに載っているのと同じインクが紹介されている。
一番上のCAW'Sインキに、二段目の「日本ブラック」。
それにその隣の「芳香スミレインキ」は
広告の背景に住出が描かれているところにあるインクと同じか
バリエーションだろう。
金色の部分はきらきら光っており、
全く退色していない。
写真ではうまく伝えられないことが残念な
とてもきれいな印刷だ。
いいものを見つけられて、
幸先の良い大江戸骨董市。
イーグルノートと古いビルに透かし紙の話
10年近く前だと思う。文房具屋さんを探してふらふら歩いていた時に見つけたビル。
もともと古い建物も好きなのだが、ドアの横の「イーグルノート」の表示とおしゃれな鷲のマークが目を引いた。
「イーグルノート」というのは知らなかったが、
「このビル、壊されないといいな、素敵なのに」と思っていて、
いつか写真をとっておこうと思ったがそれから10年たってしまった。
そしてロックダウンが解除され、街に人が戻り始めた7月に写真を撮りに行った。
なぜ、写真を撮りに行ったのか。
このノートを手に入れたのだ。
このノートを見て、「あ、あのビルのノートだ!」と思った。
マークも大体同じである。
せっかく手に入れたので、ずっと前から気になっていたあのビルと一緒に写真を撮ろうと思ったのだ。
表紙を開いた見出しのページのデザインも素敵だ。
そしてこのノート、全ページにこの鷲のマークの透かしが入っている。
いい製品をたくさん作っている会社だったのでしょうね。
このイーグルノートはイーグルノート株式会社、中田直平氏が創業者で、
この建物は東京市からの助成金で建てた本格的な耐震耐火建築だそうだ。
検索したところ、創業者の親族の方が書かれた空襲体験の記事が見つかった。
https://www.city.chuo.lg.jp/heiwa/shiryo/taikenki/kusyu/kusyu23.html
このノートを手に入れて間もなく、別のイーグルノートも我が家にやってきた。
一番右の「MEMO」という表紙のノートがそれだ。
少しイラストの雰囲気が違うが、おそらく同じイーグルノートのものだろう。
なお、こちらのイーグルノートは透かしは入っていなかったが、
一緒にあったノートには透かしが入っていた。
この三冊は小さいノートで、子供が使うものだと思うが、
それにしっかりとした透かしが入っているのはあまり見ない。
3冊ともいいものだったのだろう。
ずっと前から気になっていたイーグルビルとイーグルノート。
ノートも手に入れたし、ビルも1Fにおしゃれなカフェができていて、
しばらくは取り壊されるようなことにならなさそうなので、
ひとまずは安心だ。
このイーグルビル、近代建築として価値のあるものなのか、検索したら情報がいくつか出てきた。
「イーグルノート」の表札は残っているが、
もうノートは作っていないんだろうな。
もっとほかのノートも見て見たかった。
推定時代は明治初期、丸善のインク瓶
オークションでインク瓶がまとめて出品されていた。
こんな感じだ。
インク瓶は保安場所も取るし、結構持っているので特に欲しいものでない限り
最近は控えている。
が、これの中に「特に欲しいもの」があったのだ。
このインク瓶たちはなかなか面白いものがそろっており、一番に目が付くのは靴型で瓶を持ち上げる金具がついているものだ。スタンプインキもライトインキ、チャンピオンインキなどの篠崎インキの製品だが、「サンライト」という商品名のものは初めて見た。
手前の黄色いラベルが付いているのは「オシドリインキ」でラベルのイラストがかわいい。
だが私が特に欲しかったのは、真ん中の四角い瓶だ。
写真を拡大しよう。
ラベルの右下に「Z.P.MARU」と印刷されているのが見える。
実際のオークションの写真はもう少し斜めに映っていたので「Z.P.」しか見えなかった状態だが、これはもう「Z.P」とくれば丸善の旧社名「丸屋善八商店」の英字表記に他ならない。
「Z.P」表記の意味に誰も気づかないでー!と願いながら入札し、無事落札することができた。
ラベルはあまり質の良くない紙に、白黒印刷。
書かれていることは「BRILLIANT BLUE BLACK」「WRITING FLUED」「TOKYO」
それに「Z.P.MARUYA &CO,Ltd」とある。
丸善製のインク瓶はそこにMのエンボスが入っているのだが、それもない。
さて、このインク瓶はいつごろのものだろう。
丸善のインクの歴史は古く、明治11年には自社製品を扱っていたとのことだが、当初は「安井敬七郎」という人物が製造し納めていた。そのため明治20年頃のインクの広告を見ると瓶のラベルには「YASUI」と書かれている。
その後安井敬七郎氏は丸善に入社したが、しばらく「YASUI」の表記は残っていたようで、そこに「丸善工作部」も併記されるようになったようだ。
その後は「丸善インキ」に変わっていると考えると、「Z.P.MARUYA」のインクはどこで出てくるのか?
私は安井敬七郎氏によるインクの取り扱いが始まる前ではないかと推測した。
自社で作ったものではなく、輸入インクを自社のラベルを貼った小瓶に移して販売していた時期があったのだろうと推測した。
明治12年には海外OEMで「Z.P.M&Co」という鉛筆を販売していた丸善だ。
インクも同様のものがあっておかしくないだろう。
ということは、このインク瓶は明治の11年より前の可能性がある。明治一桁かもしれない!これは凄いではないか。そう思ってみると、ガラスも今まで見たどんなインク瓶よりゆがみがあり質が悪いように見える。
あくまで推定とはいえ、嬉しいものを手に入れた。
ここで終わってもいいのだが、他のインク瓶も簡単に紹介しておこう。
いくつか不可解な点があるインク瓶。
不可解な点①瓶をリストアップさせる金具だが、おそらく写真の角度で中のインクが少なくなった際にかかと部分にためるようにするものだと思うのだが、、、
実際はこの写真のように逆の角度でないと不安定である。
かかとが下がる角度で建てると、ちょっと触るとすぐ金具が閉じてしまう。
これ失敗作ではないか?
不可解な点② 時代がわからない。この形はたいてい明治から大正初期くらいまでの形なのだが、それにしてはガラスの質がいい。気泡やゆがみがなく、とてもきれいにできている。
ガラスの質を考えると昭和になってから作られたものではないかという気がした。
不可解な点③ これはインク入れではなく、インクを入れて売られていたのだろうか。
基本インク瓶は使い捨てであることを考えると、一つ一つにこの金具を付けていたのかと考えると、手間とコストが見合わない気がしてしまう。
と謎が多いが、面白いものなのでこれはこれでよい。
オシドリインキ。単純にラベルの絵がかわいい。
サンライト スタンプインキ。
篠崎インキ製品で「ライトインキ」が一押し商品なので、派生的な名称の「サンライト」というのは初めて見た。
いつ頃のものだろうと調べたら、「サンライト」の商標を見つけることができた。
これを見ると昭和6年以降の商品となるようだ。
サイトにインク入れだが、これは特に特徴がないといえばないが、
笑っているように見えるのが面白い。
今回は以上だ。
後半が雑であることは否めないが、2か月も空いてしまったので
とにかく続けるぞと自分に気合を入れるためのような回なので
詳細はご容赦いただきたい。
★Web連載「文房具百年」更新されました。
今月は「羽ペンを作ろう!」
リアル羽ペンと羽ペンを作る道具を紹介しているので
見てね!